2020/10/30
防災・BCPお役立ち製品・サービス
被災直後のライフラインが途絶えた復旧局面や避難中の暮らしで、備えていれば非常に頼りになるのが電力系製品の存在だ。近年の再生可能エネルギーによる自家消費の需要拡大に伴って発展をみせる蓄電池をはじめ、各種エネルギー資源を電力に変える発電機、さらに電気自動車と住宅を連携したV2Hシステムなど、新たな技術を採用した製品が登場している。企業の防災・BCPの観点から役立つ電力系製品を紹介する。
被災者に個別配布できる「非常用電源ステーション」
NTTアドバンステクノロジが提案するリチウムイオン蓄電池「非常用電源ステーション」は、自然災害や感染症など複合的なリスクがある中で、親機から子機を分離させて被災者に配布できる構造をとることで、避難時の快適性向上とソーシャルディスタンス確保の課題に対応する。
同製品は、親機電池の充電を繰り返すことで継続的な子機の利用が可能。子機を親機から分離して利用する際、電気コードの配線は不要。子機を充電するために親機に内蔵されている電池も、取り外し、別の場所に持ち運んで充電できる。親機の電池の重量は約25キログラム。親機1台に対して子機は5台単位で最大30台まで専用ラックに収容可能。
さらに、子機は、LED照明機能を標準装備し、停電時でも夜間に手元を照らす灯りなどに利用できる。子機からの給電により、ファンやヒーターなどのUSB機器と内蔵のLED照明が12時間動作(1機器の使用時)、スマートフォンは3台を満充電にできる。
親機の内蔵電池容量は5.0キロワットアワー。外部出力電圧はAC100ボルト。外径寸法は幅600×奥行き600×高さ680ミリメートル(キャスター含む)。重量は90キログラム。
子機の内蔵電池容量は112ワットアワー。出力はUSB×4ポート。外形寸法は幅95×奥行き95×高さ275ミリメートル(把手含む)。重量は2キログラム。子機用ラックの外径寸法は幅600×奥行き600×高さ130ミリメートル。
設置工事不要で移動できる業務用小型蓄電池
同製品は、専任管理者や設置工事が不要で、キャスター付きで容易に移動できる業務用小型蓄電池。コンセントにさすだけで複数の情報通信機器端末や重要機器が使用でき、排気ガスや騒音の心配もなく屋内での利用に対応する。次世代型発蓄電システムの開発、製造などを手がけるCONNEXX SYSTEMSは、万が一の停電時にも、医療・福祉施設や公共施設、企業・事業所等における業務継続を可能にする非常用モバイル蓄電システム『PEシリーズ』を提案する。
非常用自家発電設備を備えていない中小施設、大型病院の自家発電設備のバックアップなどに適し、既に、医療機関や介護施設、バイオベンチャーなどに多くの採用実績があるという。
導入事例としては、照明や電動ベッド、見守りシステムや簡単な医療機器等のバックアップ電源の備え、さらに人工透析や出産、検体の冷凍保存用のインキュベーターなど、停電があってはならない状況での電源確保をあげる。企業や行政においては、情報システムや通信機器、セキュリティ機器等、事業継続に必要な電源を確保できる。
同製品の特徴となるハイブリッド蓄電池『BIND Battery』は、鉛電池とリチウムイオン電池を併用するもので、鉛電池の安全性と低温特性、リチウムイオン電池の高エネルギー密度と長寿命の両方の特性を兼ね備える。1500ワットの高出力突入電流にも対応し、壁コンセントと同様の電力使用を可能にする。スマートフォンから冷蔵庫まで、合計約7時間の電力使用が可能。
同製品の筐体は、厚さ1.2ミリメートルの鋼板を採用。サイズは、幅400×高さ595×奥行650ミリメートル(キャスターを含む)と小さく、柔軟で機動的な対応を可能にする。
LPガス容器とつないで使用できる防災向け発電機
Hondaは、停電などの非常時にプロパンガスを用いて1.5キロボルトアンペアの発電が可能な低圧LPガス発電機「EU15iGP」を、LPガス機器事業者を通じて供給する。東日本大震災後、放置劣化の少ないLPガスの災害時有効性が取り上げられる中で、LPガス容器とつないで使用できる発電機を求める声が多かったことを受け、ガス機器などを扱う矢崎グループと共同で開発に取り組んだもの。
同製品は、1.5キロボルトアンペアの出力に対応し、投光機、暖房、パソコン、業務用機器など企業や販売店にある電化製品が利用できる。2台並列に接続する運転機能も備える。1LPガス50キログラム使用時で約74時間の使用が可能。正弦波インバーターの搭載により、商用電源と同等の安定した出力を提供する。
また、同製品は外気温摂氏マイナス15度〜プラス40度までに対応し、冬場や夜間といった低温環境での使用も可能。そのほか、非常時にワンタッチで接続して使用できることや、チョークレス仕様で始動操作が簡単な点、超低騒音といった特徴を備える。
サイズは、長さ512×幅290×高さ425ミリメートル。乾燥質量は21.0キログラム。エンジン排気量は98.5cc。メーカー希望小売価格(税込)は32万7800円。
室内で安全に使える塩水による発電機
水発電機を製造・販売するQEエナジーは、無電化地域や被災地に持続可能で安全な電力を提供するというミッションのもと、室内で安全に使える水発電機「AQUENEOUS Box 200」(アクエネオス ボックス 200)を販売する。空気中の酸素を正極活物質、マグネシウムを負極活物質、塩水を電解液として発電するもの。塩水を入れるだけで発電でき、メンテナンスは不要。マグネシウムカートリッジの交換により、繰り返して使用できる。
同製品の使い方は、塩分濃度8〜10%の塩水2.6リットルを付属の漏斗で同機に入れ、スイッチをONにするだけ。マグネシウムカートリッジ1セットあたりの発電時間は約60時間。稼働中に騒音が小さく、有毒物質を一切排出しないことから、室内で安全に使用できる。DC電源供給は、USBポート×2口(5ボルト/3アンペア)。AC電源供給は、コンセント × 2口(100ボルト/最大200ワット)。
サイズは、502×502×395ミリメートル。重さは14.6キログラム。塩水容量は水10リットル/1キログラム。電気出力は、最大200ワット/定格50ワット(使用状況により変動)。
同製品には、本体のほか、交換用マグネネシウムカートリッジ(10枚×1セット)、インバーター(コンセント使用可)、水容器(1リットル)、計量カップ(100グラム)、漏斗(1個)、ペンチ(1本)、掃除用ブラシ(1本)、取扱説明書(1年間保証書付き)が付属する。
V2Hによる「ワークプレースチャージング」で被災にも備え
太陽光発電の目的が売電から自家消費へ移行し、電気自動車(EV/PHV)がシェアを拡大していくなかで、ニチコンは、太陽光発電・蓄電池・電気自動車の“トライブリッド蓄電システム”として「EVパワー・ステーション」系統連系型V2Hシステムを提案する。
企業向けとしては、職場に充電器を設置し、従業員が勤務中にEV/PHVの充電ができるようにする「ワークプレースチャージング」への対応として同システムを提案する。充電器の無い集合住宅の居住者がEV/PHVで通勤し、会社で充電することで、基礎充電場所が確保できるようになる。災害時には、太陽光による充電に加え、充電車両から建物への給電が可能になる。
同システムのプレミアムモデル(VCG-666CN7、7.5メートルケーブル付属)の給電性能は6キロワット未満。停電時(自立時)に200ボルトのエアコンが稼働可能。保証期間は、本体設置後5年間。本体サイズは、幅809×奥行き337×高さ855ミリメートル。基礎地上高10センチメートル+本体25センチメートルで合計35センチメートルの耐浸水性を確保するほか、防錆を標準仕様とする。本体質量は、91キログラム。希望小売価格は79万8000円(消費税・設置工事費別)。
防災・BCPお役立ち製品・サービスの他の記事
- 空気清浄・消毒で企業のBCPを支えるコロナ対策新製品
- 冬場の熱源確保や保温に欠かせない熱関連製品
- 復旧・避難時に頼りになる電力系製品
- 長期保存だけじゃない、多様化する保存食製品
おすすめ記事
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/24
-
-
-
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方