いくつか参考になる情報の入手先を紹介しておきたい。

まずは気象警報・注意報。
http://www.jma.go.jp/jp/warn/ 

注意報なら黄色、警報なら赤色で表示がされる。目安として、注意報が発表されるのは大雨の1日前から半日前、警報は数時間前と覚えておくと分かりやすい。できれば、その地域ごとの過去の最大降水量(24時間、48時間、72時間)なども調べておけば、どの程度の降水量が予想されると危険なのかが判断しやすくなる。地震と違って地域によって危険な降水量が変わる点は気象災害の難しい点である。

写真を拡大 出典:気象庁

「今後の雨の情報」は、15時間先まで雲の動きが把握できる便利なツールだ。
https://www.jma.go.jp/jp/kaikotan/index.html

これに対して、雨雲の動きを細かく把握する上で役立つのが「ナウキャスト」で、こちらは1時間先までの高解像度な情報を得ることができる。
https://www.jma.go.jp/jp/highresorad/index.html

また、洪水の危険がある地域では、「洪水警報の危険度分布」が役立つ。
https://www.jma.go.jp/jp/suigaimesh/flood.html

河川ごとに水位によって色が変わっていく(赤は氾濫警戒、紫が氾濫危険、黒が氾濫発生)ので、近くの河川状況が一目で把握できる。大きな河川なら、河川管理事務所などからさらに詳細な水位情報が発表されているので、併せてみるといい。

このほか、浸水や土砂災害の危険情報も同じページ内でボタンクリックによって切り替えて表示することができる。
https://www.jma.go.jp/jp/doshamesh/

上のボタンで、表示が切り替えられる

ホクトでは、台風19号対応の反省点として、社有車やダンプカーが水没したことを挙げている。「ある運輸事業者は過去の水害で車両を多数沈めてしまった経験から、BCPで車両をどこに逃がすかをあらかじめ決めていたため、昨年の台風19号では1台も水没させなかったといいます。当社でそうした対応ができなかったことが残念です」(担当者)。

同社は、BCPの改善点として、災害が起こる可能性が高い場合は事前に取れる対策を実施することを明記したという。「現地では、災害が発生する可能性があると思っても、車両を逃がしたり、在庫を逃がしたりする判断は難しいのが現実でしょう。時間帯が夜中であればなおさらです。しかしBCPに規定してあれば、責任者が判断しやすくなる。そのためにあえて明文化したのです」(同)。

さらに、仮に被害を受けた時のために、復旧方針をあらかじめ決めておくことも重要だ。まずは被害情報が整理できるホワイトボード類などがあるか。ほとんどが在宅勤務中というなら、ウェブ上で、情報共有できる仕組みが必要になる。復旧業者への依頼や代替生産方法なども検討しておきたい。発電機や高圧受電設備が水没すれば、長期間、電機は使えなくなる。その間、製品の代替生産はどのように行うのか。これも被災してから考えるのと、あらかじめ考えておくのでは当然復旧のスピードが異なる。コロナ禍とあって、ただでさえ生産能力が落ちている今、これ以上生産を遅らせるわけにいかない企業が多いのではないか。

在宅勤務が多い中では安否確認も普段より時間がかかることが予想される。在宅勤務においても企業の「安全配慮義務」は発生する点には注意が必要だ。仮に社員が被災したら、どのような支援を行うかも検討されているだろうか。ホクトも従業員30人ほどが被災した。「寮が5~6室空いていたので、急きょ電気や水道を開通させ、家族とともに入ってもらった。全員の入居は無理でしたが、近くに寮があったのはよかったと思います」(担当者)。このほか、取引先や顧客が被災する可能性もある。どのように被災状況を確認するのかなど、今できることはたくさんある。

9月4日時点の進路を見ると、今回の台風の被害は国内にとどまりそうにない。韓国に拠点や取引先を持つ企業は、韓国内で大きな被害が出ることも想定しておいた方がよさそうだ(9月4日追記)。

一方、ホクトでは、役立った点は組織体制や指揮命令系統を挙げている。「誰がリーダーになるのか、現地でだれが指揮をとるのかといった組織体制を明確に決めていたことが有効だったと思います。指示命令系統がブレると、緊急時は物事が動きません」。この点は旭酒造も同じで、組織体制や指揮命令系統は、災害対応のフェーズでは最も重要になるということを強調しておく。

最後に昨年の台風19号後に実施したアンケート結果を紹介する。大きな被害を受けなかった企業でも、さまざまな課題があることが明らかになった。
https://www.risktaisaku.com/articles/-/22028

課題として最も多かったのが「社員の意識が低かった」こと。在宅勤務で、ほとんど勤怠管理ができていない状態かもしれないが、それぞれが備蓄や避難準備などをしっかりやっているか、今の段階で確認することが重要ではないか。さらに、「風水害は想定していなかった」との課題も多かった。この点は冒頭に書いた通り。被災を前提にあらゆる対策を見直す必要がある。「被害状況の確認の遅れ」も大きな課題とされた。これも、被災を想定していないことによるところが大きい。毎年、災害がある度に「BCPが思うように機能しなかった」という話を聞く。本来、BCPは、想定外の事態が起きても対応できるようにしておくためのものだ。期待した通りにBCPが機能しないとしたら、その問題はどこにあるのか? 台風が来ると分かっていても被災するまで何もしようとしないのはなぜか? 台風に備えながら、今一度、BCPに取り組む姿勢を見直してみてはどうか。