2020/03/06
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
野外での用足しは?
さらに、今回のようにトイレットペーパーがないかも、という事態になると、いつも必ず出てくる意見があるのです。特にアウトドア関係者に多いアレです。アレとはすなわち、「俺は(私は)外でもできる!」という宣言です(笑)。今回はこの説について検証してみましょう。
アウトドアの世界では、もともと野外での用足しについては環境問題とも相まって論争がありました。そして、多くの人のバイブルともいわれていた本が、今は絶版になっているコレです。
1995年に出版された本のタイトルも衝撃的ですが、中身も衝撃的でした。例えば、微生物の生存限界を超える高度だと汚物は分解されないので、持ち帰りなどの対策が必要になることや、海の浄化能力は高いので、シーカヤッカーなら海でできるかもしれないが、川は分解できないので、リバーカヤッカーは絶対すべきでないということが書かれています。
また洞窟探検をする人は、狭い洞窟をロープやカラビナ(編注:開閉できる機構が備わった固定用のリング)を使い、体を傷つけることとよりもウン袋を破らないようにいかに苦慮してすりぬけるかという描写は絶妙でした。バイブルといわれるゆえんの場面だと思います。そして、タイトルにあるように山や野山では分解されないティッシュ問題、野生動物とは違う人工的な食べ物を食べている人間の糞便が環境に与える影響など、一筋縄ではいかない問題に気付かせてくれる名著です。
さらに、最近の話題の本はこちらです。
出版社の案内はこちら
題字・カバー画はミュージシャンの知久寿焼さん(元「たま」)、巻末には、HONZ代表・成毛眞さんとHONZ編集長・土屋敦さんの対談を掲載。口絵や伝説的袋とじページも再現。
単行本刊行後から現在までを語る、著者の文庫版あとがきも掲載。文庫化でさらに「糞力」がパワーアップした。
21世紀の奇書誕生!
意識的野糞を始めて35年。元菌類写真家・伊沢正名氏は、糞土師(ふんどし)として、連続野糞記録3000日、延べ1万回以上の大記録を樹立した。
一見、奇行とも思えるその行為の背景には、食べることばかり関心を持ち、排泄物には興味を持たない、表層的エコロジーブームへの強烈なアンチテーゼがあった。
雨の日も風の日も、田舎でも都会でも、果ては「明日のウンコを今日出す」秘技をもって長時間の飛行機での移動にも耐え、自分のウンコを全て土に返すという信念に殉じ、伊沢は野糞を続ける。
なぜ、著者がライフワークとして野糞を企図するに至ったか? 迫り来る抱腹絶倒の試練。ついにたどり着いた世界初! ウンコ掘り返し調査の全貌と、世界で最も本気にウンコと付き合っている男のライフヒストリーを通して、ポスト・エコロジー時代への強烈な問題提起となる記念碑的奇書を、より多くの人の手へ。
この本は真面目にして崇高な志とともに野グ○が実践されているだけでなく、拭くのに適した葉っぱ図鑑など、トイレットペーパーがなくなった際にも役立つ情報満載なのです。
それにしても、この出版社の案内文に見られるように、野グ○に対する人々の敬愛の念は相当深いものと感じます。著者も仙人や導師のように尊敬の念を抱いて迎え入れられていることが、本のレビューを見ても分かります。それがゆえに、「俺は(私は)外でできる!」とおっしゃる方々も、同じように、自信に満ちあふれ、目をキラキラと輝かせて発言されるそのお姿のまぶしいことといったら!
だからなおさら、次の一言を言うのを防災講座のたびに申し訳なく思うのです。
「でも、災害時は決して外でしてはいけません」
この言葉を発した際の、皆さまの目から輝きが失われ、落胆が瞳に宿るその瞬間を毎回見なければいけない講師のつらさをご存じでしょうか?(といいつつ、面白がって話していますが)
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