<ケース2>「県庁より 拡散お願いします!」

こちらも実際にまわっていた情報です。こんなメールが来たらどうしますか?

災害時は「大変!すぐ拡散しなくては」と思いがちですが、落ち着いて考えるとこのメールはかなり変です。

「自衛官」「県庁」という事で真実性を主張したいかのようですが、「県庁より 拡散お願いします!」は、県庁発信情報としてフレンドリーすぎ(笑)。

もし熊本県発信情報だとしたら、「危機管理防災課 何月何日何時情報」と発信元の課と日時が具体的に特定されています。

それだけではなく、不審者(車)情報や性暴力情報は、危機管理課や防災課の管轄外です。

この内容が「県庁」から発信されることはありえません。では、警察が発信するかというと、しません。このメールには車のナンバーまで書かれていたりするのですが、逮捕状もとらずに一般に向けて不審というだけで情報が発信されることはありません。

こんなメールが来たら、役所ホームページや警察ホームページを確認してください。普段から、声かけ事案や性暴力情報を発信している警察アドレスからの情報であれば信じてよいですが、県庁から・・って。

ということで、出だしから怪しさ満載のメールなのですっかり拡散する気は失せそうですが、それでも気をつけていただきたいのは、強姦情報も掲載されているということです。

実際のメールでは2件ほどの性暴力情報が掲載されていました。

性暴力については平時の警察通報率も4%程度です。表に出にくいがゆえに、すべてデマとされた歴史があります。こんな状況を考えると、このメールについては怪しさ満載ではありますが、メールによっては真実を含む警戒情報がまわってきている可能性もあります。もしもメールに真実があるかもと思ったら、こんな発信の仕方はいかがですか?

まず、県庁よりは怪しすぎるから削除しましょうかね・・・

「◯町で性暴力事案が発生したというメールがまわってきました。真偽は不明です。ですが、性暴力は平時から顕在化しにくく、すべてがデマとされやすい性質があります。注意喚起として念のため転送します。実際に被害にあったら、△に連絡を。被害を相談されたら、被害者は決して悪くないことを伝え、□を確認してください」

平時から、こんなフォーマットについて考えておくのはいかがでしょうか?

△ ついて

例えば近くのワンストップセンターなど、性暴力の相談体制を平時に調べておいてみてください。


内閣府は、性暴力を経験者が、妊娠・性感染症の検査・緊急避妊・心理的ケア・司法面の サポート等、必要な支援を1カ所でまとめて受けることが可能な「性暴力被害者ワンストップ支援センター」を2020年までに各都道府県に最低1箇所開設する方針を推進しています。被害者の負担が少なく、必要なケアや司法手続きを一カ所で得られるシステムです。

ただ現状では、国からの財政補助がないので、開設が限られています。被害者や被害に気づいた人が相談しやすい状況を作ることが性暴力の潜在化を防ぎ、加害を防ぐことになります。

先の中野宏美さんの論文によると「性暴力は犯罪であり、性的人権の侵害であることから、本来公的機関が責任を持って取り組むべき事項である。そして日頃からの相談体制が確立していなければ、災害時にはさらに機能が低下するのである」とあります。


ワンストップセンター以外の相談先について知りたい方はこちらも参考にしてください。


「被害にあわれた方へ 何をすればよいか」(NPO法人しあわせなみだ)
http://shiawasenamida.org/m01_01

□    について

例えば、独立行政法人国立精神・神経医療研究センターの犯罪被害者のメンタルヘルス情報ページでは、被害者に相談を受けた時、してはいけない言葉かけについて書かれています。

■独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
「犯罪被害者のメンタルヘルス情報ページ」

http://www.ncnp.go.jp/nimh/seijin/www/for-sufferers/others_02.html

被害を受けた方が本当にいるならその方への対応を知らないと、2次被害の加害者になってしまいます。2次被害防止の情報も同時に拡散してほしいと思います。

「被害者・サバイバーに言ってはいけないこと」として、山本潤著「13歳『私』をなくした私」朝日新聞社P150〜151引用します。


(以下、引用)
「まさか、信じられない!

「あなたは嘘つきだ」と言われているように感じることがあります。

「どうして、あの人があなたにそんなことをしたの?あなたが何かしたんじゃないの?」
性暴力の責任はあなたにあると言われているように感じられます。

「もう忘れなよ。先に進まなきゃ」
人は性暴力からすぐに立ち直って、先に進むことなんてできません。

「あなたの気持ちはわかるよ」
性被害を受けたことがないのなら、本当にはわからないはず。

「かわいそうに」
同情されることを一番嫌がる人もいます。

「あなたにそんなことをしたやつは許せない」
被害者は自分を責めています。ほかの人が加害者を責めると、「悪いのは私」と被害者が加害者をかばおうとしたり、怒りをなだめなくてはいけなくなります。加害者が家族だった場合、被害者は自分も責められているように感じることがあります。

「誤解しているんじゃないの?」
被害者は起こったことを誤解しているんじゃないかと悩んだあげく、あなたに打ち明けています。