以下、法律事務所アイディペンデント弁護士・南部弘樹先生にペット同伴避難拒否とその法的課題について、アドバイスをいただいたのでご紹介する。

目次
1 問題の所在
2 日本の災害時における動物保護の現状
(1) 法令
(2) 行政の取り組み
(3) 裁判例等
3 検討
(1) 国家賠償法に基づく損害賠償請求の要件
(2) 原則論
(3)諸外国における動向と展望

1 問題の所在

(1)災害時には人だけでなく、動物も被害を受ける。たとえば東日本大震災においては動物の置き去り、大量死が生じた。また動物の同行避難(災害の発生時に、飼い主が飼養しているペットを同行し、指定緊急避難場所等まで避難すること)・同伴避難(被災者が避難所でペットを飼養管理すること)の可否という問題も生じた。

2019年9月の台風第15号による災害でも主として猛暑下の停電を原因とする動物の熱中症、死亡事例が生じた。そして、やはり動物が避難所に入れない事例も報告された。

(2)では避難所に家庭動物を連れて避難したところ、避難所運営者から家庭動物との避難所内での同伴避難を断られた結果、飼い主がやむを得ず車中避難、損傷の激しい自宅への残留、家庭動物の自宅放置などの選択をせざるを得なくなったことで家庭動物が死んだ場合、またはメンタル的に生活に支障が出た場合、避難所を管理している自治体にどのような法的責任が生じ得るだろうか。

(3) 以下、まず日本の災害時における動物保護の現状を概観したうえで、検討を加えることとする。