多様性礼賛の風潮が招く欧米への同一化
第61回:価値観の棚卸しの必要性(7)
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2024/04/15
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
前回は「もしトラ」による影響の一つ、移民問題に関して語った。今回は関連する影響として、多様性を前提にした共生に関して語りたい。
まず、最初にお断りしておきたい。歴史や文化を常識的に理解しさえすれば、日本は世界で類を見ないほど多様性に寛容で、共生を実現してきた社会であるということだ。それなのに、日本はあたかも多様性に不寛容で、後進国的な差別がはびこるとの批判が少なくない。そして、現職内閣総理大臣がビデオメッセージで、差別社会であるかのように発信してしまった。なぜそうなるのか、不思議で仕方がない。
歴史や文化を形づくるのは、そこに存在する人そのものであり、人の思考がもとになることはいうまでもない。そして、人の思考回路や思想信条に最も影響を及ぼすのが宗教であり、政治や科学もかつては宗教的視点を欠いては語れなかったのが歴史的事実である。
この視点で日本の特徴を考察すると、多神教であることを抜きにしては語れないことに気付くだろう。そして多様性を語る多くの国が一神教を基盤とする国家であることも現実だ。この違いを意識しない人が多いかもしれない。それこそ多神教社会がゆえ、この違いに認識が及ばないのかもしれないが、まずはこの違いを認識する必要があると考える。
わかりやすい象徴的なユビキタスという一神教発信の考え方を下記に示す。あくまで概念図であり比較論なので、宗教論的に間違いであるとのご批判はご容赦いただき、マクロ的イメージとして考えてほしい。
●一神教ユビキタスと多神教のイメージの比較
一神教では森羅万象あらゆるものに神は遍在し、その神は唯一絶対神(従って大文字のGODという固有名詞として表現)である。一方、多神教では、自然界のあらゆるものにそれぞれ神のご加護が及ぶという自然信仰が基盤になる。
この二つに、今までにない新たな勢力が加わることをイメージしてもらいたい。つまり、多様性を受け入れる視点である。
一神教の場合、他の勢力が加わっても、同じ唯一絶対神の元に参画しない限り排除の対象になるのは容易に想像できる。つまり、一神教にとって多様性を受け入れるというのは同一化にほかならない。一方で多神教の場合、他の勢力が加わっても列が一つ増えるだけである。多様性の受け入れに寛容なのは当然なのだ。
もちろん、現代においてこれほど単純に原理主義にもとづくわけではないが、両者の間で、社会を構成する基盤に大きな違いがあることは無視できない。歴史的経緯の違いは歴然としている。そして考察しなければならないのは、多神教の構造下に、一神教の原理主義が入った場合に起きる衝突、問題解決の方向性だ。
再考・日本の危機管理-いま何が課題かの他の記事
おすすめ記事
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方