2016/06/07
おかしくないか? 日本の防災対策
3 訓練計画書の策定
目標を決めたのち、訓練の日時、場所、内容を決め、参加対象者を誰にするのか、訓練方法(「図上」か「実働」か)などを決め、表1の訓練計画書を作成します。
また、訓練対象部門の責任者及び関係機関の了承を得るようにするとともに、表2の参加者(訓練統括者、コントローラー、評価者、記録者など)も定めます。
なお、訓練計画書の作成は、訓練日の1~3カ月前に作成するなど、あらかじめスケジュールを決めます(表3参照)。
4 訓練の想定
訓練を実施する前に、具体的に訓練想定を定めます。
地域における地震の規模やライフラインの被害状況は、国や自治体が発表した被害想定を参考に、所在する施設の被害が最も大きい地震を想定します。地震発生時間は、最悪の事態を想定しておくことが重要です。企業では従業員や来客者がいて工場・設備が稼働している「勤務時間中の地震発生」を想定することを、お勧めしています。
停電、ガス・上下水道停止、通信不通、交通機関停止などのライフライン状況や設備等の被害状況、職員の参集状況、従業員の負傷者の有無などについても、具体的に想定することが肝要です。
負傷者を想定する場合、負傷個所、負傷の程度、歩行の有無、意識状況など、負傷者役が演技できるよう、きめ細かく定めることが重要です。
5 訓練プログラムの策定(シナリオなき訓練の勧め)
訓練の実施に当たっては、訓練目標を達成するため、実施する訓練項目と訓練の流れを定め、次に実施場所、訓練に要する時間、訓練参加者、使用する資機材を定めます。
次に、訓練項目ごとに、参加者の役割分担、大まかな動きが分かるような訓練プログラムを作成します。その際、参加者の発言を記した詳細なシナリオは作成せず、訓練参加者に、自らどのような行動をとるかを考えてもらうことが重要です。
シナリオがない訓練では、次から次と起こる想定外の事態に対し、参加者があわてふためいたり、どうしてよいか分からなかったりして、多くの課題が明らかになります。
実際の災害時における失敗は命取りになる可能性がありますが、訓練ではいくら失敗してもそれが後々役に立ちます。想定外の事態が起こった時にどのように行動したらいいのかを理解し、失敗しながら覚えていくことが大切です。多くの失敗例や問題点が明らかになる訓練が、良い訓練といえます。
「訓練でできないことは、災害発生時にできない」ことを、十分理解しておいてください。
6 訓練実施上の留意事項
(1)関係機関との調整
訓練計画書ができたら、所管の消防署へ届けるとともに、必要な指導を受けるようにしてください。また、警察署や関係行政機関などに連絡し、必要な助言を受けるようにします。さらに、必要に応じ、近隣の町会や自治会、関連団体に連絡し、協力を得るようにします。
(2)通常業務の変更
訓練実施に伴い通常の業務を変更する場合、少なくとも1週間前までに従業員や関係者へ周知し、理解を得ます。
(3)訓練の中止
訓練当日が雨天や悪天候などの場合、いつの時点で、誰が訓練を中止・延期するかについても、あらかじめ決めておきます。
(4)訓練当日
訓練統括者の進行により訓練を開始します。必要に応じて「訓練を中断」する場合や訓練終了時も、訓練統括者が指示します。
訓練当日、実災害が発生した場合、または業務上重大な支障が生じた場合、訓練統括者の指示により、訓練を中断または中止します。
訓練が終了したら、訓練統括者のもとで意見交換会(反省会)を開催し、訓練評価者による講評や訓練参加者の意見や感想を出し合うようにします。
(5)訓練終了後
訓練終了後は速やかに訓練実施報告書を作成し、所管の消防署へ提出します。また、必要に応じ、警察署や関係行政機関、近隣の町会や自治会に報告します。
さらに、訓練の成果に基づき、必要なBCPやマニュアルの改善を行います。
なお、BCPやマニュアルへ反映のポイントは、次の通りです。
・手順書の記載にしたがって動けたか⇒記載内容の追加・修正
・臨機応変の対応をしたか⇒その手順を追加
・手順書の記載の順序が適切だったか⇒記載内容の修正
・手順書記載事項を省略したか⇒記載内容の削除
- keyword
- おかしくないか日本の防災対策
おかしくないか? 日本の防災対策の他の記事
- 【最終回】震災対策訓練を考える~シナリオなき訓練のススメ~
- 第4回 無駄な備蓄をしないポイント
- 番外編 震災直後の「情報の共有化と情報トリアージ」
- 第3回 企業よ、急いで安否確認をするな
- 第2回 被害想定を信じるな
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方