2019/02/04
災害関連死ゼロフォーラム レポート
■「災害関連死ゼロフォーラム 第1回全国大会シンポジウム」概要
2018年10月15日に東京都新宿区の京王プラザホテルで初めて開催した本全国大会シンポジウムでは、避難所や避難生活で災害関連死をなくすためにどうするかをメインテーマとし、3つの専門セッションを行いました。



特に心がけた点として、何か一つでも具体的な気づきや対策として進められるアクション部分を生み出せるようにセッションの組み立てを行いました。そのために本フォーラムでは、個別対策を検討するための「会議・研究会制度」を設けています。
具体的に(1)被災地の実態は避難所・避難生活研究会が担当し、避難所や避難生活を行える人づくりを目指して「さすけなぶる」と呼ばれる避難所運営シミュレーションによる学習や、「避難所再現エリア」による具体的なイメージ醸成を行いました。(2)環境衛生は防災衛生会議が担当し、「防災衛生パーソナルキット」による個人でできる脱水状態や感染症への対策方法をお伝えしました。(3)生活継続は発起・共催団体である地域防災支援協会と日本環境保健機構が担当し、災害復興法学IIなどの各種書籍を基に、制度上の多角的な側面でお伝えしました。
「災害関連死ゼロフォーラム 第1回全国大会シンポジウム」の様子(出典:YouTube)
■今後に向けて
今回の全国大会シンポジウムでは、避難所や避難生活という側面から、3つのセッションに絞って皆様と一緒に具体的な対策のアクションを進めるきっかけ作りを行うことができました。この機会を通じて私が最も強く課題と感じた点は「災害関連死につながる避難所や避難生活の状態がイメージできていない」「そのため具体的な対策のアクションにつながっていかない」部分です。したがって、例えば(2)環境衛生の「防災衛生パーソナルキット」を使った対応のように、「脱水状態等の危険性があるので、まず経口補水液を自分で作って飲むようにしよう」「感染症をうつさない、もらわないようにするために、まず自分で正しくマスクを付けるようにしよう」「口腔免疫を保つために、まず自分できちんと歯みがきを行おう」といった、誰もが分かるような対策のアクションを示し、その重要性に気づく機会を作るという流れが大切であると感じました。

次回の全国大会シンポジウムは、2019年10月29日(火)に開催を予定しております。特に高層住宅や訪日外国人も含めた帰宅困難者など、大都市部における災害関連死をなくすためにどうするかを検討したいと考えております。災害関連死ゼロの社会づくりに向けて、是非多くの皆様からのご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
■参考文献・関連サイト
災害関連死ゼロフォーラム 第1回全国大会シンポジウム
http://bosai-expo.jp/event/zeroforum.html
防災衛生会議
http://bosai-eisei.jp/
避難所運営シミュレーション・さすけなぶる
http://www.sasuke-nable.com/
復興庁・震災関連死に関する検討会「東日本大震災における震災関連死に関する報告」(2012年8月21日)
http://www.reconstruction.go.jp/topics/20120821_shinsaikanrenshihoukoku.pdf
衆議院・第197回国会 予算委員会 第2号会議録(2018年11月1日)
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001819720181101002.htm
岡本正「災害復興法学II」(慶應義塾大学出版会 2018年)
http://www.risktaisaku.com/articles/-/9384
(了)
災害関連死ゼロフォーラム レポートの他の記事
- 災害関連死防止へ法制度での担保を
- 避難所・被災生活改善へ具体的アクションを
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方