2018/03/16
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
赤ちゃんと防災、子どもと防災
母乳だけでなく粉ミルクをあげている方にもとてもわかりやすい、優しさにあふれる記載が以下です。

粉ミルクの場合は、ミルクと哺乳瓶、両方の殺菌が必要な事が簡潔に書かれています(哺乳瓶だけではなくミルクは殺菌が必要です)。
哺乳瓶については、使い捨て哺乳瓶が紹介されることがありますが、1つ400円前後で、1回ずつ使い捨てです。1日8回ですと1週間では60個必要ですから、12000円分の備蓄が必要になります。通常の哺乳瓶よりコンパクトになるものもありますが、金額的にも個数的にもすべてを使い捨て哺乳瓶の備蓄でまかなえる家庭は少ないです。
そのため、実際、被災現場で使われているのが紙コップを使った授乳です。「哺乳瓶の備蓄」や「使い捨て哺乳瓶の備蓄」が勧められていても、紙コップについて言及しているものがまだ少ないです。これについても、「教えてドクター」には、とても詳しく書かれています。
紙コップを使い捨てで1週間分60個を備蓄しても、歯科医用の衛生品でも100個で200円〜300円です。紙コップであれば、粉ミルクでも母乳の方でも備蓄しやすい価格ですので、念のため備蓄してねとすすめても、使わない際、食器にもなりますから、負担の少ないものになっています。
(母乳のお子さんにミルクを飲ませる必要が医療的に出てきた場合でも、紙コップであれば、赤ちゃんの飲み方が哺乳瓶に慣れてしまって母乳に戻りにくいという現象も起こらないので、その後の母乳育児の継続を妨げないと言われています)。
液体ミルクについては、現時点では自己責任による個人輸入品は可能です。販売価格は粉ミルクより高額になっていて、1回分200円〜300円くらいの価格です(送料別。使い捨て哺乳瓶つきはさらに値段があがります)。
粉ミルクは、70度以上のお湯で殺菌して、その後冷ます必要があります。液体ミルクはその手間を省けるということで、災害時だけではなく、日常でもミルクの調乳に慣れていない人に赤ちゃんを預ける際にも喜ばれています。
1回で使い捨て哺乳瓶とセットのものは、哺乳瓶を別途備蓄する必要もなくなります。液体ミルクでも、数回利用の哺乳瓶詰め替えタイプのものは、哺乳瓶については災害時消毒が必要です。3月12日付のニュースで、夏には日本でも正式に解禁されるとの動きがでています。
■乳児用液体ミルク、今夏にも解禁...災害備蓄に利用も(読売新聞)
https://medical-tribune.co.jp/news/2018/0312513392/
液体ミルクについてはこちらのリスク対策.comの記事も詳しいです♪
■乳幼児用液体ミルク、国内製造可能へ(リスク対策.com)
http://www.risktaisaku.com/articles/-/5278
ということで、母乳育児の人はそのまま母乳育児が継続できるように、ミルクが必要な方は液体ミルクの導入も含め、より親子の日常が維持される支援が必要です。非常時に備えて日常の大きな変更を促すのではなく、「非常時の環境をどれだけ普段の環境に近づけられるか」に留意している防災・減災情報がもっと広がってほしいと思っています。

ここに書かれている「災害時でも、子どものケアは基本的には普段と同じです」という言葉かけは、子育て中の親の自己肯定感を下げない、素敵な表現だなと思うのです。
それまでの育児に対し、ダメ出しではない、寄り添う姿勢が嬉しいです。
また、「乳幼児や医療が必要な子どもは避難時にご近所の助けが必要です。誰に助けに来てもらえるか、あらかじめ決めておきましょう」という情報は、とても重要だと思っています。あたりまえすぎるのか、この情報は省略されることがあるので、こちらこそ、重点を置いて欲しいと思うのです。
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/03/05
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/03/04
-
-
-
トヨタが変えた避難所の物資物流ラストワンマイルはこうして解消した!
能登半島地震では、発災直後から国のプッシュ型による物資支援が開始された。しかし、物資が届いても、その仕分け作業や避難所への発送作業で混乱が生じ、被災者に物資が届くまで時間を要した自治体もある。いわゆる「ラストワンマイル問題」である。こうした中、最大震度7を記録した志賀町では、トヨタ自動車の支援により、避難所への物資支援体制が一気に改善された。トヨタ自動車から現場に投入された人材はわずか5人。日頃から工場などで行っている生産活動の効率化の仕組みを取り入れたことで、物資で溢れかえっていた配送拠点が一変した。
2025/02/22
-
-
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
-
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
-
-
2度の大震災を乗り越えて生まれた防災文化
「ダンロップ」ブランドでタイヤ製造を手がける住友ゴム工業の本社と神戸工場は、兵庫県南部地震で経験のない揺れに襲われた。勤務中だった150人の従業員は全員無事に避難できたが、神戸工場が閉鎖に追い込まれる壊滅的な被害を受けた。30年の節目にあたる今年1月23日、同社は5年ぶりに阪神・淡路大震災の関連社内イベントを開催。次世代に経験と教訓を伝えた。
2025/02/19
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方