2020/05/08
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
ケース2. 多世代が暮らすマンション防災会議をWebで
次はこちらのFacebookページ「もしゆれ」の管理人さんがお住まいのマンションのケースです。
「もしゆれ」管理人さんのマンションは、20世帯前後が暮らす都内のマンションです。

そこでは毎年春先にマンションの防災イベントが行われており、2月に理事会が開催された際には、今年のテーマとして、新型コロナウイルスを念頭においた「Web防災会議」のアイデアも出されていたそうです。
しかし、まだ2月の段階では「パンデミック」ともされておらず、その影響を身近なものとしては実感していない時期でもあったので、行事は「防災まちあるき」を実施することに決定となりました。
ところが、3月中には防災まちあるきは実施できないことになり、だったら「Web防災会議」を実施してみようかという流れとなりました。そこで、まずはWeb会議を利用したことがある人がマンションにどのくらいいるか、アンケートをとったそうです。

このマンションは、未就学のお子さんを育てる子育て世代から退職後の生活を満喫されている方まで多世代の人が暮らしています。普段から行事参加率の高いマンションでもあるのでアンケートはほぼ全員からかえってきました。結果、Web会議未体験の方は約3割ほどいることが分かりました。
防災イベントに先立ち、まずは理事会でWeb会議を体験することにしてみたそうですが、理事4名と防災担当1名の計5名のうち、2名が全く体験したことのない方でした。
「もしゆれ」管理人さんが防災担当でもあったので、Web会議のアプリなどのダウンロードは事前にお伝えしつつ、例えば「ノートパソコンを持っているけど、カメラやマイクは付いているように見えないが大丈夫か」という質問には、電話を使って型番を調べつつ、対応機種であることを説明して設定のお手伝いをされました。
迎えた理事会当日、Web会議が始めての70代の理事の方もいるというのに、その日のうちに皆さんバーチャル背景を設定したり、ホワイトボードに触り始めて、好奇心の塊となって楽しんでくれたそうです。
なかでも「もしゆれ」管理人さんの心を打ったのは、いつも頭脳明晰な発言をされる理事の方の一言でした。その方は耳が聞こえにくくなっているものの、補聴器を付けると痛くなるので、会議の場ではいつも恐縮されながら聞き返しをされていたそうです。ところが、Web会議のその日、その方が開口一番に、「皆さんの声がよく聞こえます!」と、弾んだ声でおっしゃったそうです。
このお話を取材でお聞きしたとき、じーんときてしまいました。
「一体、誰? 高齢者はITが使えないとか言っているのは!」と、またまた思いました。
Web会議だからこそ、音量も自由に調整ができ、不自由を感じなくて済むことができるのですね。まさしく高齢者にこそ使ってもらいたいツールとさえいえます。
Web会議は、マンション防災やコミュニケーションの可能性をいろいろと広げていけるツールだと思います。家族や自宅がどうなっているか災害時には最も気になります。例えば出張中だったり、地震の際、都内は職場待機が基本なので自宅に戻れません。そんなとき、家族の安否やマンションの被災状況を確認でき、場合によっては速やかな修繕に向けての動きを作れるWeb会議はありがたいです。
また、実際に時間帯によっては会議に参加できない世代の方が参加しやすくなったり、小さい頃の顔は知っているけど、成長するとマンション内の子なのかどうか分からなくなるという問題もマンションでは起きてきますが、会議の時に子どもの意見も聞くなどすれば、顔の見える関係づくりも可能になります。
日ごろから使いなれることが大事
このマンション理事会ではトラブルも体験されたそうです。作業中iPhoneが熱を持ち過ぎてアプリが突然終了してしまったため、冷やす方法を実践してみたり、部屋によってWi-Fiがつながりにくいことを確認したとお聞きしました。
こんな失敗も経験として重要ですよね。いざ災害時になった際、始めてのツールは使えません。今後は、災害時にもできるだけ通信環境や電源が維持される努力がより必要になってきますが、ご紹介した2つの事例を参考に、皆さんの地域の防災力アップにつなげていただければうれしいです。
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
「ビジネスイネーブラー」へ進化するセキュリティ組織
昨年、累計出品数が40億を突破し、流通取引総額が1兆円を超えたフリマアプリ「メルカリ」。オンラインサービス上では日々膨大な数の取引が行われています。顧客の利便性や従業員の生産性を落とさず、安全と信頼を高めるセキュリティ戦略について、執行役員CISOの市原尚久氏に聞きました。
2025/06/29
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/24
-
-
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方