2020/03/05
昆正和のBCP研究室
■会社としてすべきこと
震災発生当日から翌日にかけての都心部は、幸いにも都市機能や交通網の物理的な破壊や大規模な停電が起こらず、大地震(震度5強)のわりにその影響は比較的軽かったといえる。

しかし、もし震度7クラスの巨大地震が起こり、真夏や真冬、周囲で大規模な火災が発生したり台風の最中であったりした場合には、事態はきわめて深刻である。大混雑や大渋滞に加え、熱中症や低体温症、落下物やがれきによるケガ、パニック、行き倒れ、交通事故などにより、多数の死傷者が発生する事態も十分に考えられる。

こうした事態を避けるために、自社の建物が安全であるならば、社員を無理に帰宅させずに社内に一晩とどめておくくらいの手順と準備、いわゆる帰宅困難者対応と非常時の備蓄は必須と考えておこう。もし会社の建物が被災して危険ならば、最寄りの避難所その他、安全な施設へ帰宅困難者を誘導するしかない(代替施設は前もって特定しておく必要がある)。
なお、帰宅困難者への対応は、帰宅が困難になった時と場所によっていくつかのパターンに分かれる。
まず社内にいる社員については、公共交通機関が再開するまでしばらく待機するか、翌日まで待ってから帰宅してもらうことを検討する。これには、帰宅時間に時差を設けることで路上の大混雑を緩和する目的もある。
外出中の社員については、出先(訪問先)や最寄りの支店、営業所などで一時待機し、時間や天候を考慮して、ある程度安全と判断した時点で会社または自宅のどちらか近いほうに戻るといった判断が必要である。
会社への来訪者も、社員と同じように帰宅困難に陥る可能性がある。この場合の対応は、オフィスにいる社員の場合と同じである。どんなに社内が混乱していても、外部の人であるという理由で対応をおろそかにしたり、無理に帰社・帰宅を促したりするようなことがあってはならない。
昆正和のBCP研究室の他の記事
- 第28回[最終回]:3つのステップによるメッセージの発信
- 第27回:必要な人員の確保をはばむ要因と対策その2
- 第26回:必要な人員の確保をはばむ要因と対策その1
- 第25回:災害時の帰宅または移動の留意点
- 第24回:安否確認のポイント
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/01
-
-
-
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方