荷物が散乱し、車が多重衝突した状態(左上)から、時計回りに交通路確保が進んだ(写真を一部加工)

国交省やJAFも参加し交通路確保

9月1日には例年行われている倒壊建物などからの救出・救助訓練などに加え、小田急・京王多摩センター駅北側の多摩ニュータウン通りを通行止めにして警視庁、国土交通省、都建設局、日本自動車連盟(JAF)、地元建設会社で組織する多摩市建設協力会による緊急交通路確保訓練を行った。地震でトラックの荷物が落下。その影響で後続の小型トラックと他車3台が追突する事故が発生した想定。事故後に白バイ隊員が駆けつけ、さらに国交省と都建設局による状況確認のほか、JAFと多摩市建設協力会も駆けつけ、荷物の除去に加え、レッカー車の他にカードーリーも用いて車を移動。事故から12分程度で車を左に寄せ、緊急交通路を確保した。都では事故車両や放置車両による渋滞を危惧し、今回は道路を一時通行止めにしてでも訓練の実施に踏み切った。

倒壊建物などからの救出・救助訓練の最後に一斉放水

最終日の9月2日は小池百合子知事の緊急登庁訓練が行われた。陸路が寸断され、自宅から都庁までの通常の移動が困難と判断した想定で、自宅近くの都立公園まで徒歩とパトカーで移動。ヘリコプターに乗り、渋谷区の都立代々木公園にある陸上競技場の織田フィールドに降り立ち、都の災害対策車で新宿区の都庁に向かった。その後、都庁でテレビ会議を用いた多摩市との本部審議訓練を実施した。

ヘリコプターから降り立つ小池知事(左)

3日間の開催や中学生による宿泊避難所設営・運営訓練、通行止めにしての緊急交通路確保訓練といった、例年にない合同総合防災訓練となった今年度。中学校での訓練についてはいつ起こるかわからない地震に備え、生徒がいる場合は支援者として設営や対応にあたれるようにという、多摩市の従前からの姿勢が背景にあった。

小池知事は9月1日の訓練後の講評で、「『災害は忘れたころにやってくる』はもはや死語で、昨今は頻繁にやってくる。『備えよ常に』の精神を持ち、公助以外に自助・共助を心がけてほしい」と呼びかけ。さらに報道陣の取材に応じ、多摩中学校での訓練について「子どもたちは常に地元にいるが、発災時に両親は都心にいるということもある。地元の子どもが設営から行うというのは、防災意識や発災時にすべきことについて、からだで学ぶ良い機会だと思う。多摩市の皆さんのご協力に感謝したい」と述べた。

いつ起こるかわからない地震。そして避難所になる学校とそこにいる可能性が高い生徒。いざという時に市職員や教員だけでなく、一番多くいる生徒が状況を理解し行動することが共助の推進につながる。学校でよく行われる避難訓練から、学校という場所の意味を踏まえてさらに進んだ訓練が実施された今年度だったといえる。

(了)