コロナ死の現実を見て対策を変えるべき時に来ている(写真:写真AC)

コロナ禍はオミクロン株による第6波で致死率が低下し弱毒化との見方が一般的だ。一方で、感染者数が増加することにより致死率ではなく絶対的死者数増になっていると警鐘を鳴らす声もある。第6波がピークアウトに向かいつつある2月中旬、あるテレビ番組で出口戦略をめぐり激論が交わされた。

その内容は、元官僚の弁護士であり大学特任教授のコメンテイターが、致死率低下の現状において世界の潮流は「デス・ウィズ・コロナ」で語ることを見直し「デス・バイ・コロナ」で語るべきとなってきていて、日本も経済活動の制限に傾くバランスを是正すべきとの主旨の提言を行ったことに端を発した。これにテレビ局社員コメンテイターが猛烈に噛みつき、全否定したのだ。

直接死因でなくてもコロナ死?(写真:写真AC)

そのコメンテイターは、致死率が低下しても感染者数が増加することで死者数は過去最高となっているとし、相手を知性が低いとまで非難、デス・ウィズ・コロナなどの表現を言葉遊びと揶揄し、全死者を「コロナに感染しなかったら亡くならかった」とまでいったのである。

正直申し上げて、いったいどちらの知性が低いのか、なぜこのような論理矛盾の勝手論理が電波メディアで報じられ、その後何の検証もなく、お咎めもないのか、不思議で仕方がない。

コロナ死の実態

厚生労働省から令和2年6月18日に発信された事務連絡には、コロナ死に関わる記述を「新型コロナウイルスの感染症の陽性者であって亡くなった方」「厳密な死因を問わない」と明記されており、その理由を「死因選択や精査に一定の時間がかかる」「速やかに把握する観点」としている。

この定義による運用は、各自治体や個々事例によって相違が生じるが、けっして「コロナに感染しなかったら亡くならなかった」とはならない。それは直接原因を問わないだけでなく、あくまで陽性者であり、非感染者も含まれるからだ。極論をいえば、死者からコロナウイルスが数個検出されれば、コロナ死となり得る。これは、超過死亡を押し上げない一因でもあるのだ。

では、第6波のコロナ死の実態を考察する上で、重症化の様子をデータで確認してみたい。下のグラフは「NPO法人日本ECMOnet COVID-19 重症患者状況の集計」に示されているECMO装着数の推移(2022年3月18日時点)である。

画像を拡大 データ出所:NPO法人日本ECMOnet COVID-19 重症患者状況の集計

明らかに第6波はECMO装着数が少なく、比較すると第2波と同等、第5波の5分の1程度である。ECMOとは、人工肺とポンプを用いた体外循環回路による治療であり、最後の「切り札」とされている。つまり、第6波では重症化は激減しているのだ。

念のため、人工呼吸器装着の推移も見てみる。

画像を拡大 データ出所:NPO法人日本ECMOnet COVID-19 重症患者状況の集計

若干、第6波の装着率も上がっているが、大きな傾向に違いはない。受け入れ可能数との比較を見ても、受け入れの余力がないわけではない。

もちろん、このデータはCRISISに申告されたものだけであり、全体の数字ではないが、日本のICUの80%ほどを反映していると推察されており、全体の傾向を示しているといっても過言ではないだろう。つまり、第6波の重症化は率だけではなく絶対数でも大幅減少しており、死に至るリスクも低下していると考えるのが当然だ。