阪神・淡路大震災を乗り越えた経営者たち。オーラルヒストリーからは、当時の企業経営者がいかに困難を乗り越えたか、どう意思決定したかを読み取ることができる。ノーリツの創業者で、現名誉会長の太田俊郎氏は、震災で大変な状況の中、翌日東京で開催された全国の代理店会に駆けつけ、会社の存続を悲観する代理店に「つぶれない」と言い切って神戸に帰ってきた。甲南大学を運営する甲南学園の理事長だった小川守正氏は、私学の任務が授業を継続することにあるとし、仮設校舎を建設し授業を早期に再開させるとともに、被害状況と学園の財政、将来性などを考慮して再建のための投資を決断した。

ポートピアホテルの社長だった中内力氏は、世界中からの宿泊客を3日間で帰宅させ、宿泊場所の無い多くのメディア関係者に部屋を提供した。さらに、「お客さんに来てもらうということ以外にホテルの復興は無い」と、震災後、コンベンションセンターの建設を決めた。何のために企業が存在するのか、震災時における企業の責務とは何か?それぞれの経営者がそんな原点に立ち返って復興の道を切り開いてきた。 

編集部注:本稿は「リスク対策.com」本誌2015年1月25日号(Vol.47)掲載の記事を、Web記事として再掲したものです。役職などは掲載当時のままです。(2017年1月17日)

京都大学防災研究所の林春男教授がリーダーとなってインタビューした経営者のうち、現在、人と防災未来センター(神戸市)で公開されているインタビュー5本を抜粋して紹介する。