緊急地震速報で誤報があった際の対応で多くの意見が出された

気象庁は10日、「緊急地震速報評価・改善検討会」の第10回会合を開催。5日に東京23区など揺れを観測しなかったエリアでも緊急地震速報の警報が流れた件や、これまでの緊急地震速報の実績、3月から導入するPLUM法による速報発表について報告や議論が行われた。

5日は午前11時2分に富山県を震源とする最大震度3の地震が発生。その約3秒後に茨城県で同じく最大震度3の地震が発生した。当初は富山県の地震の震源を基に予測を行ったが、茨城県の地震が起こり2つの地震を同一地震と判断。茨城県の地震に震源を切り替える際に富山の地震の振幅を用い、マグニチュードを過大評価した。これにより通常は最大震度5弱以上の地震が発生し、4以上が予測されるエリアで流れる緊急地震速報の警報が、最大震度3の地震でも流された。

気象庁によると現在の体制では離れた地域で起こった地震も、できるだけ1つの地震としてまとめてとらえる傾向にあるという。出席した委員からは「今回のように警報が流れて揺れなかった場合、不安が残ったままになる。取り消しの情報を流せないか」といった意見が出された。気象庁は地震があった場合、警報後に震度情報を発表している旨を説明。過大な警報が出た後のそれ以外の対処は検討課題とした。

気象庁では2月にこの検討会の下部にあたる技術部会で今回の件について調査内容を報告し、問題を整理する予定。座長の田中淳・東京大学大学院情報学環 総合防災情報研究センター長・教授は「今回のような『空振り』の警報の場合、早く社会活動を通常に戻すことが大事。現在の体制では対応を苦手とするケースもあるので、その整理が必要だ」と述べた。

過去の実績では2007年10月1日から2017年12月31日まで流れた警報190回を分析。この中において震度4未満で流れた「空振り」と震度5弱以上を観測したのに流れなかった「見逃し」の統計が公表された。「空振り」は該当地震190回のうち28%の54回、「見逃し」は同じく177回のうち43%の76回。年度別でみると東日本大震災があった2010年度は「空振り」44%、「見逃し」56%と高い数値となっている。

3月から緊急地震速報ではPLUM法が導入される。PLUM法とは予測地点から一定の範囲内の観測点で、最も高く出た震度を予測値とするもの。距離を予測地点から半径30km以内とし、従来法と比較して大きい方の予測震度を発表する。PLUM法は従来よりも広いエリアで地震を検知できる反面、警報発表が遅いエリアが生じる。このため津波警報より緊急地震速報の警報発表が遅くなるといった、情報が錯綜し混乱するケースが懸念されていた。

これまでの緊急地震速報の警報発表は地震検知後60秒までだったが、PLUM法を導入時に90秒までに延長する。導入から1年後をめどに、津波警報に重ならない程度まで再延長する計画としている。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介