2017/12/07
防災・危機管理ニュース
文部科学省を中心とした政府の地震調査研究推進本部は6日、政策委員会の「新総合政策基本施策レビューに関する小委員会」の第7回会合を開催。現行の地震調査研究の原則となっている「新総合基本施策」における実績や課題をまとめる報告書の構成案を公表した。課題については多様な意見を掲載し、2019年度から適用される次期総合基本政策の策定に生かす方針。
現・総合基本施策である「新総合基本施策」は2009年に策定。2011年の東日本大震災を経て、2012年に改訂された。2012年の改訂では主に海域での津波観測に注力する旨が付加された。次期総合基本施策は2018年度に取りまとめ、2019~28年度まで適用する。このため現・総合基本施策で取り組むべきとされた各分野について、実績の精査や今後の課題発見を行っている。
レビュー報告書は現施策下での主な実績と今後の課題が主要内容。実績では太平洋の北海道沖から房総沖までの太平洋におけるS-netなど海域の地震津波観測網の整備、津波の即時予測の強化、活断層の調査研究による情報の体系的収集・整備や評価の高度化などが挙げられた。
今後の課題については委員から挙げられた多様な意見を掲載する方針。特にこれまで意見が多いのは地震本部の役割。「地震本部の最も重要な役割はハザード評価と予測。地震保険の保険料算出にも使われているが、耐震基準などにもハザード評価を使えないか」「9月にとりまとめられた政府・中央防災会議の新たな南海トラフ地震の対応策も踏まえ、想定される事象に対して対応策を検討すべき」といった意見を取り上げた。
中央防災会議が9月にまとめた報告書では報告書は1978年に制定された大規模地震対策特別措置法(大震法)で前提となっている地震の直前予知は現時点で困難と結論づけ、そのうえで南海トラフ沿いでの最初の事象後にとるべき対応を盛り込んでいる。
南海トラフについては中央防災会議の9月の報告書で言及されている、南海トラフの東側だけでM(マグニチュード)8クラスの地震が起きた時に、プレート境界の滑りの把握の必要性も指摘。海域観測網についても日本海や南西諸島に加え、高知沖から日向灘までの南海トラフ西部も未整備で進展させるべきとの意見が出ている。
地震本部では読みやすくまとめる可能性はあるが、レビュー報告書の今後の課題には多様な意見を掲載したいとしている。今年度末に報告書をまとめ、2018年度に実施する次期総合基本施策策定に生かす。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
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