具体的な動物救助事例はもっとシェアされるべき
動物救助は人間相手にも応用できるはず
一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事/
一般社団法人 日本国際動物救命救急協会 代表理事
サニー カミヤ
サニー カミヤ
元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際緊急援助隊。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。G4S 警備保障会社 セキュリティーコンサルタント、FCR株式会社 鉄道の人的災害対応顧問、株式会社レスキュープラス 上級災害対策指導官。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中。特定非営利活動法人ジャパンハート国際緊急救援事業顧問、特定非営利活動法人ピースウィンズ合同レスキューチームアドバイザー。
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私の消防関係者ネットワークで知り得たことですが、実は日本でも日々、さまざまな動物救助が行われています。しかしアメリカではニュースとなるような事案であっても、日本ではできるだけ広報しない現状にあるようです。
Dramatic Images Show Dog Being Freed From Tire Around Neck (出典:YouTube)
その理由を消防関係者の方々に聞いてみると、命に危険のある動物を救出する行為を消防の装備を使って行ったことで「本来の業務なのか?」とか「動物を助けるために税金を払っているのではない」などの一部の市民からクレームが来る可能性があることと同時に、メディア対応にも慣れていないからだそうです。
自衛隊の今年のポスター「守りたい命がある」を見て下さい。命に対しての本気度を1枚の写真から感じます。
■下記のキーワードで検索するとたくさんの動物救助が見られます。
「firefighter poster rescue dog」「自衛隊 犬 ポスター」
また、Facebook上の世界の消防署が発信しているページでも、さまざまな消防による動物救助事例やシーンが映像や画像で紹介されています。こういうメディアの使い方こそ、本気の消防広報だと思います。
たとえば、インディアナポリス消防局の動物救助事例
■Indiana Police Fire Department のFBページ
https://www.facebook.com/indianapolisfiredepartment/posts/1010759928942534
なんと4万人以上の方々が、このインディアナポリス消防局の動物救助事例について賞賛しています。
記事の概要を説明します。インディアナポリス消防署第5分署に、ジェシカという女性が車のタイアのリムに頭が挟まった状態のメスのピットブルを連れてきました。その雌犬の名前は「ジマ」で、近所でよく見かける1歳半の野良犬でした。
犬を連れて駆け込んだジェシカは、普段からこの犬にえさを与えており、帰宅後にえさを与えようとジマを探したところ、タイアリムに頭が挟まった状態のジマを見つけ、獣医などのアドバイスを受け、日頃からレスキューを行っている消防署に連れて行ったそうです。
駆け込んだ消防署では、交通事故などで使う小型の油圧や空気圧の切断・開放などの救助器具を持っていなかったため、ほかの署に応援要請し、2隊合同で犬の救助を行いました。
まず、石けんやサラダオイルを犬の首に付けて滑らせながら引き抜こうとしましたが引き抜けなかったため、車のブレーキペダルを切断する工具を使用して、リムにいくつかの大きな切れ目をつけ、リムの切れ目をさらに開くためにスプレッダーという油圧器具を使用しました。救助には1時間以上掛かりましたが、無事に成功しています。
また、ジェシカがジマの里親になり、ずっと一緒に暮らすことを消防士達に告げたところ、ジマを助けた消防士達が心から拍手でお祝いし、ジェシカとジマの幸せを祈りました。
この動物救助事例で消防士達が気をつけたことは以下でした。
・犬を励まし、がんばっていることを褒め続けた。
・恐怖による犬の心臓への負担を考え、連続的な救助は行わず、少しずつ、休憩しながら行った。
・音が出たり、振動の大きい救助器具を使わなかった。
・油圧器具も一箇所に力が掛かるとひずみにより、動物の首を絞めたり、簡単にはひずみを戻せないため、2つ以上の油圧器具をバランス良く使いながらタイアリムの解体を行った。
・石けん水やサラダオイルを犬の首の部分に付けて、滑りやすい状態にしてタイアリムから外そうとしたが抜けなかった。
・サラダオイルを使ったため、熱や火花を発生しない救助器具を選択した。
いかがでしたか?
日本でも、こういう貴重な動物救助事例の対応手順や使用資機材などを、関係者の許可を得て公表することで、さまざまな救助器具の応用的な活用事例としても、その内容は確実に生かされると思います。
また、現代は消防の救助事案が少ない現状にもあり、これがもし人間の子どもだったときにどうするのか?その救助事例の参考にもなると思います。
消防士の皆さん、どう思いますか?一般社会に公表するのが難しくても、救助学会などでさまざまな動物救助事案なども発表されるべきだと感じますが、いかがでしょうか?
動物救助事案として、それに特化した事例集を作ってもいいかもしれませんね。
みなさんのコメントをお待ちいたしております。
ペットライフセーバーズ
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