熊本地震では、家具転倒防止をしていなかった多くの家具が倒れた

みなさん、読んでいただけましたか???何かというと、この記事です!

■港区、区営住宅などの家具転倒防止器具による原状復帰義務を免除〜家具転倒防止対策を強化~
http://www.risktaisaku.com/articles/-/2749

ずっと取り組んできたこの件で、実施してくれる自治体がでてきたことが本当に嬉しいです。今まで「できない理由」を教えてくれる方にはたくさんお会いしてきました。でも、できる方法を考えられる人と出会ったら、意外とあっさり実現されたのです。港区さん!ありがとう!

以前記事にした時は、原状回復義務の免除の必要性と法的に可能な方法を説明しました。そしてどこかの自治体が実施してくれないかなあと願望も書きました。

■地震対策に必須の建造物の耐震化と家具固定。でも賃貸物件では家具の固定ができない?~防災では勧められ、賃貸借契約では否定されているネジ止めを直視しよう~
http://www.risktaisaku.com/articles/-/2033?page=3

今回は、なぜ原状回復義務に関心を持ち、何を実行したのかという話と、港区が実施した実務的な手法をお伝えしたいと思います。行政関係の方、特に後半だけでもお読みいただければ嬉しいです!

2016年に行政向けに作成した資料の表紙です

きっかけは、この想いにつきます。家具の転倒防止をしないのは、やらない人の意識の問題にされる事が多かったのです。でも、賃借人には原状回復義務があるから、転倒防止ができません。それならば、いくら啓蒙しても転倒防止は実施されません。根本的な解決をしないと!

家を借りる時、宅地建物取引業の有資格者による説明を受ける事が義務付けられています。その際、みっちり原状回復義務の説明を受けるわけです。経年劣化以外は、ぜんぶ賃借人の負担ですよ、穴をあけたら賠償金がかかりますよ・・と。それだけ、脅かされたら、壁を傷つけないよう気を使いますよね。

それなのに、防災本には、「転倒防止しましょう」「ネジ止めが基本です」なんて啓蒙一筋。確かに、ネジ止めができない場合は、粘着タイプやつっぱり棒タイプもありますよと、勧めてくれるのですが、賃借人なら思ってしまうわけです。ほんとに、一切壁を傷つけずに剥がせるの?って。

もちろん民間の製品開発の進歩で、壁を傷つけない粘着タイプもでてきました。でも、まだすべての壁が対象ではないし、上部がフラットではない冷蔵庫は固定できないなど、全員が恩恵を受けるわけではありません。つっぱり棒タイプも、天井が頑丈でないと効果を発揮しません。長周期地震動の揺れには対応していないと言われています。

それならば、壁に傷をつけるリスクを覚悟してまで、転倒防止グッズ取り付ける人が一体どれだけいるのか?と疑問に思いました。ネジだと数百円〜数千円ですみますが、転倒防止グッズは数千円〜数万円になります。実施者が少数になるに決まっていますよね。

 


 しかも最初は、家を借りる人だけが転倒防止を実施していないと思っていたのですが、持ち家の人も転売の際に評価が落ちることを気にして、実施していないことがわかりました。マンションが多い都市部ではなおさらです。