災害時に赤ちゃんの健康にとってのベストを考えます(出典:写真AC)

ミルクが「もったいない」は違反!?

今回は、災害時の乳幼児の国際基準について、みなさまと情報を共有したいと思っています。最初に質問です。次のうち災害時の乳幼児の、国際基準に反する可能性のある行為はどれだと思いますか?

災害時の乳幼児の国際基準に違反する可能性のあるものはどれでしょう ?
●災害時、避難所に届いたミルクを、子育て中の人全員に配る
●備蓄していたミルクが賞味期限前になる前に、市民に配布する
●母乳は災害時のストレスで一時的に止まることがあるからと説明して、日常からのミルクの備蓄を勧める

(※ミルクは粉や液体の人工乳を指します)

実は、このすべてが国際基準に反する可能性があります。「どうして?災害時によく言われている事じゃないの?」と思われるのではないでしょうか?

知らなかったという方も少なくないかもしれませんが、過去の災害現場では、この国際基準は繰り返し話題になってきました。でも、災害時は混乱していて、じっくり議論されませんでした。災害現場は混乱していて当然です。やむをえない部分も多かったと思います。災害が起こる前の平時にこそ、議論しておかないといけません。この国際基準に賛成だと思っても、反対だと思っても、いずれにせよ、過去に話題になってきた以上、スルーすることは今後できません。どのような立場の人も、まずはしっかり学んで検討が必要と思っています。

さてその前に、みなさんとお約束したいことがあります。以前もこの「母乳」や「ミルク」の話をする前に書いたのですが、この話題で、心が苦しくなる方がいらっしゃいます。また、この話を母乳対ミルクの話にして対立構造に持っていくのは絶対にやめてほしいと思っています。それがなぜなのか、最初に書くと長くなるので、最後にまとめておきますね。

■母乳育児でもミルクを備蓄??子育て中の親に優しい防災情報を!
http://www.risktaisaku.com/articles/-/5279

災害時の乳幼児栄養法の重要性

さて、今回の記事は、女性防災ネットワーク東京にて1月28日に実施された学習会の講師の先生たちの話を元に作成しています。長いので、次週も続きます。スライドを見ながら、みなさんも考えてみていただければうれしいです。

写真を拡大 資料提供はすべて本郷氏より

最初に登壇してくださったのは、東京大学大学院医学系研究科 国際地域保健学教室客員研究員 本郷寛子さんです。本郷さんは、乳幼児栄養の専門家でもありますし、長年災害時の乳幼児支援に関わってこられた災害時における乳幼児支援の第一人者でもあります。現在、災害時の乳幼児栄養救援活動の国際ガイドライン(OG-IFE)の2017年版の翻訳作業もされています(※IFE=災害時の乳幼児栄養)。

OG-IFEって何?と聞きなれないかもしれません。これは、WHO(世界保健機関)、UNICEF(国連児童基金)、WFP(国連食糧計画)、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)などの国連機関や複数の人道援助団体からなるネットワークが発行した、災害時の乳幼児栄養救援活動の国際ガイドライン(2017年訳ではOG-IFEを「活動の手引き」と訳しています)です。

内閣府の避難所運営ガイドラインでも参照したことで、防災関係の方の多くが知る事になったスフィア基準の中でも、また、人道行動における子どもの保護の最低基準でも、すべての災害時の国際基準は、IFEガイドラインを参考にすることを明記している元ネタ中の元ネタって基準です。

本郷さんが翻訳に関わっている最新版の一つ前の2007年版の日本語訳はこちらにあります。
http://jalc-net.jp/dl/OpsG_Japanese_Screen.pdf

これから、記載する内容は、最新版である2017年版の内容を反映したものとなっています。