幻の東京オリンピック大会
国際スポーツの最大の敵は軍国主義だ

高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
2019/01/15
安心、それが最大の敵だ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
戦後2回目の東京オリンピック大会が来年に迫った。そこで戦前の<幻の東京オリンピック>を再考したい。それは戦前の暗い時代を象徴する事件と言える。よく知られた史実も少なくないが、あえて煩瑣(はんさ)をいとわず記してみたい。
明治42年(1909)春、駐日フランス大使であったゼラールから東京高等師範学校(現筑波大学)校長・嘉納治五郎に突然の会見申し込みがあった。同大使の説明によると「自分の同窓生であるフランス人クーベルタン男爵(1863~1937)は同志とともに国際オリンピック委員会(IOC)を組織し、1896年に第1回国際オリンピック競技会を催した。以後、4年ごとに同競技会を開催しており、今後さらに発展していく勢いがあるが、IOCは欧米各国の委員で構成され、アジアはまだ一人の委員も参加していない。ついてはアジアを代表して、日本で適当な人物を探して本委員会に参加するように促してもらいたい」というものであった。嘉納には寝耳に水の突然の依頼であった(以下「柔道の歴史と文化」藤堂良明著を参考にし、一部引用する)。
ピエール・ド・クーベルタンはフランスの教育家で教養人であり、嘉納よりも3歳年下である。彼は普仏戦争(1870~71)に敗れたフランスの再建に起ちあがり、21歳の時にイギリスのパブリックスクール(伝統ある私学進学校)で行われていたスポーツ教育に感銘を受けた。「健全な精神は、健全な肉体に宿る」。彼は時あたかもギリシア・オリンピックの発掘調査報告書に刺激を受けて、スポーツによる青少年の教育と古代ギリシャで開催されたというオリンピック休戦を契機とした平和の実現(オリンピアード)を目指して、1894年に国際オリンピック委員会を組織して近代オリンピックを創始したのである。
嘉納に面会する前、ゼラールはクーベルタンの依頼に応じて、日本外務省に助言を求め諸方面に意見を求めた。その結果、講道館柔道創始者であり高等師範校長として生徒に勉学はもとより、長距離走や水泳などの近代体育を奨励し、<スポーツの先覚者>であるということで、嘉納が推薦された。嘉納は躊躇することなく要請を受け入れ、これを機に国際交流を図り、国内では各種スポーツを奨励して国民体力の向上と健全な精神を育成しようと目論んだ。嘉納の国際感覚をここに見る。
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/01
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方