2021/08/25
【インタビュー】リスク情報の進化と活用
変わる技術環境と社会の意識
現在は災害や事件・事故が発生すると、現場のリアルな映像が次々とSNSにアップされる。近隣住民やその場に居合わせた市民の投稿は地上波のTVニュースより早く、かつ生々しい。これを防災やBCPに役立てようという動きがいま、急速に広がっている。インターネットに刻々と上がる無名性の投稿をどこまで役立てられるのか、今後どのような可能性があるのか――。SNSを通じた危機情報の配信サービスに取り組むスペクティ(東京都)取締役COOの根来諭氏に聞いた。
取締役COO
根来諭氏
――SNSにもとづく危機情報配信サービスのメリットはどこにありますか?
一つはやはり、早いことです。例えば2年前、京都アニメーションの放火事件がありました。7月18日午前10時37~38分に発生したのですが、当社の配信サービス「スペクティプロ」では、3分後の10時40分に第一報をあげています。
その後、近隣住民や通行中の人たちがさまざまな角度で撮った写真を50件以上SNSに投稿し、NHKのニュース速報が流れたのが11時25分。それももちろん早いのですが、当社はそれまでに50報以上を出している。
これが工場の火事であれば、情報取得の早さが初動を左右し、その後の復旧作業や代替措置に影響を与えることはいうまでもありません。サプライチェーンマネジメントを担当している部署であれば、自社のサプライチェーンで起きた問題を即座に知るか、数時間後に知るかで、その後の対応は大きく変わってきます。
もう一つ、SNSにもとづく情報は画像が一緒に入ることが大きい。ひとことで火事といっても、炎が上がっているのか、ほかに延焼しそうなのか、くすぶっている程度なのか。状況が一目瞭然ですから、意思決定の迅速性と正確性は大幅に高まります。
実際、事故・災害の現場はパニックになっているので、電話などで現地の状況を詳しく伝えるのは容易ではない。情報を受け取る側も、把握するまでに時間を擁します。それがTVニュースより早く、現地の情報が画像付きで分かる。海外の社員の安全を守る部署などには特に有用だと思います。
【インタビュー】リスク情報の進化と活用の他の記事
- 危機情報を避難行動に結び付けるために何が必要か?
- 気象情報は劇的に「早く」「細かく」なっている
- 意思決定に使える情報をいかに「早く」「多く」知るか
- 被害を即時に生々しく伝えるSNSの可能性
おすすめ記事
-
医療機能の維持を可能にした徹底的なハード対策非常時の代替ライフラインはチェック表で管理
元日の能登半島地震で激震に襲われた恵寿総合病院では、地震後も業務を止めることなく、充実した医療を提供し続けた。10年をかけて整備してきた、徹底的なハードとソフト対策のおかげだった。
2024/05/20
-
目まぐるしい状況変化 懸命に向き合った3カ月
市立輪島病院は能登半島地震で被災しながらも、懸命の処置により、運び込まれる負傷者や感染症に苦しむ患者の命をつなぎました。超急性期・急性期を乗り切ると医療需要は急減し、代わって介護機能の維持が深刻な課題に浮上。発災から介護医療院開設までの約4カ月、病院で何が起きたのかを同院事務部長の河﨑国幸氏に聞きました。
2024/05/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月14日配信アーカイブ】
【5月14日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:行動指針の意義
2024/05/14
-
-
情報セキュリティーは個人のリスク目線では通用しない
学生時代からパソコンを使いこなしてきた人が新入社員に多くいる昨今ですが、当然、個人と会社ではセキュリティーの重心が違います。また、人事異動で新たに着任した社員も、業務が変われば情報資産との関わり方が変わり、以前と同じ意識でのぞめばよいとは限りません。新年度にあたり、情報セキュリティーのルールは特に徹底したいところです。
2024/05/10
-
-
サイバーインシデント対応の基本知識と準備
本勉強会では、一般的な情報セキュリティインシデントとサイバーインシデントの違いや、その初動対応について事前に準備すべきことと合わせて、自社で手軽に訓練・演習を実施するためのポイントを解説します。2024年5月8日開催。
2024/05/09
-
-
炎上の原因はSNS上の振る舞いのみにあらず
新年度から仲間に加わった新入社員は「デジタルネイティブ」と呼ばれ、友人とSNS で交流するのがあたり前の世代です。が、学生時代と違い、社会人になれば取り巻く環境が変わり、自身の立場も変わる。うかつな投稿が「炎上」につながるケースは少なくありません。新人研修のテーマにSNSリスクを組み込むなどして教育を徹底したいところです。
2024/05/08
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方