2018/03/06
防災・危機管理ニュース

内閣府は5日、「洪水・高潮氾濫からの大規模・広域避難に関する基本的な考え方」の報告書を公表。内閣府を中心とした政府の中央防災会議のワーキンググループの田中淳主査(東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター長・教授)から小此木八郎・防災担当大臣に手渡された。主に三大都市圏での大規模洪水を想定。複数の地方自治体が連携した、広域避難計画を策定の手順などをまとめた。
報告書では浸水区域の居住人口が多く、数十万人以上の立ち退き避難者が発生し、市町村や都府県を超えるような立ち退き避難が必要な事態を想定。各市区町村の避難勧告や各個人に避難行動の判断をゆだねてしまうとリスクが増大の可能性があり、最適化のための避難行動の構築が必要だとした。複数の行政機関による広域避難計画策定を促す。
広域避難計画を策定する場合は、対象地域や災害を設定し、家屋流失や全居室浸水などの被害を受けた域外避難者を算出。橋など通行が遅くなるボトルネック箇所も考慮し、避難にかかる時間と洪水予測から避難開始のタイミングを設定する。避難先については親戚宅や勤務先など自主避難先の確保を住民に推奨する一方で、近隣市町村での受け入れ先を調整する。広域避難計画策定にあたっては市区町村のほか、調整などで都道府県が役割を積極的に行う。国も必要に応じてかかわるほか、避難手段となる交通機関などの参加も見込まれる。
人口255万人の墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区の東京都の江東5区で大規模洪水が起こった場合、最大178万人が避難の必要があり、5区内の域内避難が最大で19万人いたとしても、域外避難が最少でも159万人となる。鉄道の運行停止もあることから、天気予報などで推定できる堤防決壊予想時刻の24時間前には避難開始を行うべきとされている。
内閣府は全都道府県に報告書の内容を通知。都道府県に市区町村にも内容を周知するように要請した。江東5区について、内閣府は東京都のほか、地元区や交通機関、河川管理者などと協議の場を作る方針。
■報告書はこちら
http://www.bousai.go.jp/fusuigai/kozuiworking/index.html
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方