2018/02/21
防災・危機管理ニュース
東京都は20日、「今後の帰宅困難者に関する検討会議」の報告書を発表した。2017年12月21日の会合で委員から求められた、一時滞在施設で帰宅困難者の負傷などの際の都独自の補償制度については盛り込まれなかった。都では施設管理者の免責について今後も検討を行っていく方針。
首都直下地震が起こった場合、都内では約517万人の帰宅困難者の発生が見込まれている。一方で2017年7月1日現在の都内一時滞在施設数は918施設、受け入れ人数で32万8374人分にとどまっている。一時滞在施設で帰宅困難者がけがを負うなどの被害を受けた場合、民法上は施設管理者が責任を負うことになっており、施設増を目指すうえでのネックになっている。
2017年12月21日の会合では委員から、一時滞在施設内での被害に備え、条例などで都が帰宅困難者への賠償に代わる補償制度を検討すべきだとの提案が行われ、報告書にどう盛り込むかが注目された。報告書では「民間施設に損害賠償責任が及ばない免責のしくみづくりに向け、引き続き検討を進めていく必要がある」との表現にとどめ、具体策は盛り込まれなかった。都では施設管理者の免責について国に法改正を引き続き働きかけるほか、都で行えることの検討も進める方針。また都が発災時の帰宅を控えるよう呼びかけており、帰宅困難者対策は道路混雑を抑えるなど公共政策的な意味合いがあることから、帰宅困難者の施設内での損害を自己責任で片づけないように留意することが盛り込まれた。
報告書ではさらに一時滞在施設の増加に向け、賞味期限を迎える水や食料の更新費用を補助制度に追加するなど、支援策の拡充を盛り込んだ。要配慮者に対しては一時滞在施設へのベビーフードや粉ミルク、ほ乳瓶の備蓄促進、車いす対応といったバリアフリー化のほか、外国人とのコミュニケーションとしてやさしい日本語の活用を盛り込んだ。「避難」は「逃げる」といったように平易な言葉に換える。また帰宅困難者になっても的確に対応できるような普及・啓発を推進。若年層向けにはスマホアプリの活用などを行う方針。
■ニュースリリースはこちら
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/02/20/03.html
■関連記事
「一時滞在施設管理者免責で補償検討も」
http://www.risktaisaku.com/articles/-/4435
「上野の帰宅困難者対策訓練に約650人」
http://www.risktaisaku.com/articles/-/4739
「東京都、備えを学び災害時役立つアプリ」
http://www.risktaisaku.com/articles/-/4914
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方