土砂災害・研究最前線~国総研・土砂災害研究部を訪ねて、その3~
ソーシャルセンサを考える
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
2018/01/29
安心、それが最大の敵だ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
茨城県つくば市に広がる筑波研究学園都市の中核的研究機関である国土交通省国土技術政策総合研究所(以下、国総研)の土砂災害研究部を訪ねた。前々回、前回に続いて、土砂災害研究部の特筆すべき独自の研究成果を紹介する。第3弾である。
毎年のように土砂災害によって甚大な被害が発生している。土砂災害による人的被害の軽減を図るためには、警戒・避難体制の強化は不可欠である。しかしながら、地元自治体(市町村)による避難勧告等の発令や住民自らの避難の判断のための状況把握は難しく、避難が遅れるといった課題が見られている(避難しようにも、できない事例もある)。
一方で、住民が土砂災害の前兆現象を見つけ、家族や近隣住民とともに避難して人的被害を回避した事例が度々報告されている。このような「地鳴り」「土臭い」などの土砂災害の前兆現象は、内閣府の「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」において、自治体が発令する避難指示や、住民自らが直ちに身を守る行動をとるための重要な判断指標であるとされている。前兆現象等の土砂災害の切迫した状況を迅速に把握することは、早期の警戒・避難につながるものと期待される。以下、土砂災害研究部土砂災害研究室主任研究官・神山嬢子様の注目すべき論文「警戒・避難システムへのSNS情報活用の取り組み」から引用させていただく。
これまで、防災対応における監視には、雨量計や地震計などの物理量を計測するセンサ(物理センサ)が用いられてきた。一方、人が感知(見た、聞いた、感じた等)することによって得られた情報(ソーシャルセンサ情報)は、物理センサでは観測できなかった多様な現象を観測できるようになるとの指摘がなされている。
ソーシャルセンサ情報を防災に活用する施策は、平成11年(1999)に開始され、住民から土砂災害の前兆や発生に関する情報を地方自治体の防災部局に連絡してもらう「土砂災害110番」など、これまでも取り組まれてきた。しかし、住民にとっては土砂災害がまれな現象であり、普段使用しない連絡先であることなどから通報されることが必ずしも多くはないのではないかと考えられる。前兆現象等を把握しても情報の伝達範囲が家族や近隣住民に限られることや、情報を迅速に収集し、他の地域に伝達することに課題があったといえる。
それが(1)近年の携帯端末やSNSの普及により、文字や写真による情報発信や共有、収集が容易になったこと、(2)平成23年(2011)の東日本大震災の際にSNS情報が有効であったことーなどから、SNSの防災にける活用が一気に進んできた。そこで、SNS情報を土砂災害のソフト対策に役立てるため、前兆現象や災害の発生状況をSNSによるソーシャルセンサで把握し、これらの情報を警戒・避難システムに活用するための国土技術政策総合研究所の取り組み(株式会社富士通研究所との共同研究)を紹介したい。
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