ワールド ファイアーファイターズ:世界の消防新事情
消火活動中にホースを延長したくなったらどうする?
早くて安全なエクステンションホース結合方法
一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事/
一般社団法人 日本国際動物救命救急協会 代表理事
サニー カミヤ
サニー カミヤ
元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際緊急援助隊。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。G4S 警備保障会社 セキュリティーコンサルタント、FCR株式会社 鉄道の人的災害対応顧問、株式会社レスキュープラス 上級災害対策指導官。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中。特定非営利活動法人ジャパンハート国際緊急救援事業顧問、特定非営利活動法人ピースウィンズ合同レスキューチームアドバイザー。
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火煙の環境下での消火活動中に、もう1本ホースを延長したいときはどうしたらよいだろうか。従来は、無線で予備ホースを要請するか、隊員がポンプ車まで取りに行く必要があった。しかしこのエクステンションホース結合方法を使えば、放水を十数秒以内、中断するだけで、安全にホースを足すことができる。
(Extending a Hoseline 出典:FireEngineering)
具体的な手順は下記の通りだ。指導者はコロラド市消防局のデイブ マックグレイル方面大隊長。
■コロラド市消防局HP
https://csfd.coloradosprings.gov
前提として、ポンプ車隊は最低4セットのスタンドパイプキット(島田巻きホース)を積載しておくこと。基本的に4セットのうち、1本はホースのメス金具側に二股分岐を付けた状態。2本目はオス金具側に噴霧ノズル管鎗を付けた状態で、3本目は両端に何も付いていない状態にする。
そして4本目(以下、エクステンションホース)のメス金具側には、管鎗の根元に止水レバーを付けたアタッチメント結合金具を取り付け、オス金具側には取り外した管鎗を結合する金具を取り付けておく。
下記訓練の条件設定は、活動隊員は4名で、空気呼吸器を着装した状態で濃煙内の火災建物で消火活動中を想定している。
もちろん、最初から火災建物の大きさや活動範囲の縦横方向に応じた内部進入距離をサイズアップしておけば、延長する必要も無いかもしれないが、場合によって、どうしてももう一本ホースを増加延長する必要がある場合にこの方法を用いる。
1、消火中の放水隊員(1番員)がホースが足りないことを判断し、ホースを補助している2番員にエクステンションホース1本を無線にて機関員に要請するよう指示する。
※消防対象物によっては、ポンプ車まで取りに行くことが困難だったり、時間を要するため、最初から予備ホースとして放水隊員が空気呼吸器に島田巻き状の予備ホースを固定して、持参することも考慮しておくと良いかも。
なお、4本目のホースの雌金具側には40ミリ、50ミリ、65ミリ用の結合金具が取り付けてあり、どの口径のホースを使っても、早く、確実にホースを一本増加できるようになっている。
2、機関員の指示を受けた隊員2名(3番員、4番員)が、エクステンションホースを持参するため、空気呼吸器着装状態で濃煙内をホースラインを伝って進入し、放水隊員横まで搬送する。なお、3番員が先導し、4番員がエクステンションホースを持参する。
3、3番員がエクステンションホースのUの字の底辺をポンプ車側に向けて置き、4番人と協力して島田巻きを固定しているベルトを外す。
4、4番員は島田巻きホースの10mに部分にある赤い折り返しマーカー部分を持つ。
5、3番員はホースのオス金具部分を持って『延長準備良し』と呼称。
6、4番員は10mマーカー部分を持ったまま、後ずさりしながら、エクステンションホースを伸ばす。
7、キンクのない状態にする。
8、3番員は管鎗結合部分を膝で押さえ、『結合準備良し』の合図で、1番員に止水バルブによる放水の一時中断と管鎗先端部分のノズルの脱着を促す。
※日本の場合は町野式で結合金具を作れば、ワンタッチで素早く結合できる。
9、ノズル部分を取り外し、ノズルは1番員がポケットへ収納する。
10、1番員は3番員から受け取った結合金具を取り付ける。
11、エクステンションホースのメス金具側と結合する。
12、1番員、2番員は、3番員、4番員と放水役割を入れ替わる。
13、3番員は1番員へ「止水解除」の指示を出し、1番員は徐々に止水レバーを開放し、ホースへ水を満たす。
14、ホースに十分、水が満たされたら、1番員、2番員は延長ホースをさばく。
15、3番員、4番員は放水しながら火点へ向かって前進し、消火活動を継続する。
いかがでしたか?
わかりやすいように番員を設定してみましたが、自由に応用してオリジナルのバージョンのフォーメーションを作ってみて下さい。このビデオでは放水補助要員がビデオに背を向けないように配置されているようです。
実際に訓練される場合は、空気呼吸器を着装し、面体を付けた状態でエクステンションホース結合訓練を行い、各隊員のエアーの消費量もチェックしながら行うと呼吸管理訓練も併せて行うことができると思います。
馴れてくれば、濃煙状態を想定し、面体に目隠しをして、エクステンションホース結合訓練を行うと、さらに実際の現場に近い状態になると思います。
私が調べた範囲では見つからなかったのですが、もしかしたら日本にも、すでにこのような管鎗の止水レバー部分にホースのメス金具を結合できる金具が存在するのかもしれません。
米国では、この発明が画期的な結合金具として、多くの消防局で採用開始されたようです。
もし、エクステンションホース結合金具が存在しなければ、とても重要な機器開発になると思います。意識の高い方は、今すぐアイデアの図案を描いて、ホース金具メーカーにコンタクトしてみて下さい。この記事を印刷し、添付されても大丈夫です。
参考までに下記のリンクを追記いたします。
■結合金具に接続する消防用接続器具
http://www.jfeii.or.jp/pdf/lecture/31.pdf
それでは、また。
(了)
一般社団法人 日本防災教育訓練センター
http://irescue.jp
info@irescue.jp
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