現代版・ダムをめぐる考察~ア・ラ・カルト~
水防法など一括改正で大きな流れ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
2017/09/04
安心、それが最大の敵だ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
全国にあるダム約3000カ所(堤体の高さ15m以上)のうち、建設から半世紀近く経って再開発が必要なものや洪水・水需要対策から改修・かさ上げなどが求められているものが少なくない、と聞く。だがダム建設ブームはすでに去り、新規建設が大幅に減っていることから、高度な技術を必要とするダム技術者が国や都道府県を問わず減ってきているのが実情のようである。都道府県が建設管理している治水・利水用ダムは少なくないが、都道府県や市町村の中にはダムや河川の専門技術者をかかえていないところが結構多いのである(鬼怒川決壊で市域の大半が水没した常総市も河川技術職がいなかった)。
ここに画期的な制度が導入されることになった。本年(2017年)、政府は水防法とともに河川法、土砂災害防止法、水資源機構法を一括して改正する法案を国会に提出し、法案は5月に可決成立した。(6月施行)。改正法の一大注目点は、都道府県などが管理するダムの再開発といった高度技術が不可欠な大規模工事を国(主に国土交通省)や(独)水資源機構が代行できる制度が創設されたことである。初の<国によるダム代行制度>の確立である。これまでは国や水資源機構が都道府県から要請を受けて行う<受託事業>がまれな例として行われてきた。
自然災害の被災後の復旧工事でも、早期の復旧・復興につなげるよう国や水資源機構などによる工事の代行制度が導入される。
市町村から水防活動を受託する建設企業に緊急通行など一定の権限を与え、発災時に円滑に水防活動ができる仕組みも整えた。ゲリラ豪雨や大型台風などによる被害を踏まえ、「逃げ遅れゼロ」実現に向けて国や都道府県の指定河川を対象に、流域自治体や公共機関など多様な関係者で構成する「大規模氾濫減災協議会」も創設される。協議会設置を国に義務付け、都道府県は設けることができると定めている。避難勧告発令までのタイムラインの作成などを協議会に取り組んでもらう。
ちなみに、今回の都市緑地法などの改正では、都市公園法、生産緑地法、都市計画法、建築基準法もあわせて一括改正し、民間事業者の資金やノウハウを使い、都市公園の再生・活性化、緑地・広場の創出を進める。都市農地の保全と活用も推進する。
本年5月、ダム工学会の「これからの成熟社会を支えるダム貯水池の課題検討委員会」(浜口達男委員長)は2年間に及ぶ検討結果を取りまとめた。「これからの百年を支えるダムの課題」(計画・運用・管理面)の<提言>を要約してみよう。(箇条書きとする)。
自然災害が多発する日本でのダム事情が一大変革期を迎えていることを、ダム工学会自らがアピールしていると考えたい。国民へ理解を求める努力も惜しまないで欲しいと思う。
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