2013/09/25
誌面情報 vol39
「くじ引き箱」でリアルで実践的なBCM演習
株式会社ディスコ
BCP、BCMの訓練・演習の必要性は強く叫ばれているが、自社でシナリオを作って演習するにはハードルが高く、コンサルティング会社にアウトソーシングするには費用がかかりすぎる。こうした悩みを解決する新たな演習方法を取り入れている企業がある。
半導体加工装置の製造メーカーのディスコ(東京都大田区)だ。「この演習を行うだけで実用的な手順書ができあがる」。コストも手間もかからない新たな手法とは?
いかに簡単に、抵抗なく継続できるか
「切る・削る・磨く」技術に特化してグローバルに事業展開するディスコでは、2006年からBCMに取り組み、2008年には事業継続マネジメントシステム(BCMS)の英国規格BS259992を国内半導体業界では初めて認証取得。2012年には国際標準規格となったISO22301を国内でいち早く認証取得している。
訓練・演習にはかなりの力を入れてきた。過去には何度も大型の図上演習も実施してきたが、準備に時間や手間がかかり、継続してやり続けるにはかなりのエネルギーが必要なことが課題になっていた。
起きていないことを模擬体験することで、危機対応力を高めようというのが演習の醍醐味。担当者は、その醍醐味を演出しようと、シナリオをあえて事前に参加者に示さない。すると、受講者からは「想定が分からないから何ともしようがない」と文句が出てしまう。こんな光景は、訓練や演習に力を入れている企業ほど、よく見受けられることだろう。
「BCMで一番大事なのは継続性です。コストをかけて作っても、続けられなければ何にもなりません」と言うのは同社BCM推進チームリーダーの渋谷真弘氏だ。
「当社は生産現場を抱えているので、訓練のケースによっては製造を止めざるを得ません。すると、その分がコストにはね返ってしまう。さんざん試行錯誤を繰り返した結果、どれだけ簡単にできるか、どれだけ抵抗が少なく継続できるかが訓練・演習のポイントだということが分かりました」(渋谷氏)。
「そこで、ひらめいたのがこれだったんです」と言いながら、推進チームの猪瀬順平氏が取り出したのは何の変哲もないティッシュの箱だった。
レッサーパンダが印刷された箱で、チームでは「くじ引き箱」と呼んでいる。「とにかく、コストがかかっていないことは分かっていただけたと思います」と渋谷氏は冗談交じりに説明を始めた。
おすすめ記事
-
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/17
-
-
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方