建物種類別に耐震化への課題解決を進める

東京都は13日、「特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化促進に向けた検討委員会」の第3回会合を開催した。災害時に物資輸送など使われる特定緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化の促進に向け、建築物の用途別に課題を洗い出し、対策を進めていく方向性が示された。

都では2016年度、対象建築物約2500棟の訪問を行い、約1070棟を訪問済み。訪問済みの内訳は分譲マンション21%、賃貸マンション17%、賃貸事務所・店舗が20%だった。課題は全用途共通、分譲マンション、賃貸マンション、賃貸事務所・店舗、個人住宅・その他の5種類で分類し研究する。

分譲マンションではヒアリングで「耐震改修に要する費用負担が大きい」が83%、「区分所有者等との合意形成が困難」が56%など、費用や区分所有者や入居者といった関係者の合意形成に加え、耐震改修でブレースを設置しなければならない住戸では機能が低下するなど、さらに合意形成を困難にする課題も指摘された。

賃貸マンションでは「賃借人等との合意形成が困難」「一度転居した場合は空室になる可能性が心配」「賃借人から賃料下落要請の可能性がある」「移転費用等の負担が大きい」といった回答がなされた。賃貸事務所・店舗でも賃借人との合意形成や移転費用の負担が指摘されている。

出席した委員からは分譲マンションについて「耐震改修だけでなく建て替えや売却も選択肢。容積率の緩和ができれば、それらもしやすくなる」「戸数が少なかったり築古だったりで、管理組合のないマンションもあるのでは」といった意見も出た。都の2011年の調査では、6.5%のマンションで管理組合の存在が確認できなかったという。

都では沿道建築物の耐震化改修で区市町村によっては90%の補助が出ることも説明。今年度は約2250棟の耐震化への取り組みに未着手の建築物に個別訪問を行う。加藤孝明委員長(東京大学生産技術研究所准教授)は「(改修費用が高いなど)対象者の思い込みで止まってしまうのはよくない。情報を出していくべき」と指摘。「ハードルを乗り越えて改修に至ったケースもある。訪問の際には単なるヒアリングでなく、そういった成功モデルも話すといいのでは」と述べた。

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(了)

リスク対策.com:斯波 祐介