ワールド ファイアーファイターズ:世界の消防新事情
「心のぬくもり」の伝え方~米国の消防士たちのクリスマス
クリスマスイブ、子どもたちは救急車で教会に
一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事/
一般社団法人 日本国際動物救命救急協会 代表理事
サニー カミヤ
サニー カミヤ
元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際緊急援助隊。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。G4S 警備保障会社 セキュリティーコンサルタント、FCR株式会社 鉄道の人的災害対応顧問、株式会社レスキュープラス 上級災害対策指導官。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中。特定非営利活動法人ジャパンハート国際緊急救援事業顧問、特定非営利活動法人ピースウィンズ合同レスキューチームアドバイザー。
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待ちに待ったホリデーシーズンですね。
私が住んでいたニューヨークの田舎では、サンクスギビングが終わると、ひとつ、またひとつと、町の至るところにクリスマスの灯りが増えていきます。それぞれの光は、その家に住む家族の愛を感じられるほどほのぼのとした灯りで、包まれた町を散歩するだけでも心が温まりました。とても懐かしい想い出です。
2014 Turlock Firefighter Santa Truck Ride(出典:YouTube)
田舎の消防署では、クリスマスイブには消防車で教会に行き、ミサに参加したり、 イルミネーションで飾った消防車に子どもたちを乗せてパレードすることもあります。楽しいですよね。
22年間のアメリカ生活で学んだことの一つに、「消防士たちの心のぬくもりの伝え方」があります。
すべてのアメリカの消防署ではありませんが、いくつかの消防署では、火災や事故で家族を失った子ども、子ども病院で病気と闘っている子ども 、両親の居ない子どもたちなどに地元の消防士たちが約2週間をかけて、それらの施設を消防車で回って、プレゼントを配ります。
Ogden City Fire Department surprises family for Christmas(出典:YouTube)
これらのプレゼントは管轄内のおもちゃ販売店や百貨店がスポンサーとなって、毎年提供してくれているものなどです。日ごろから消防署が窓口となって、地域住民からおもちゃやギフトなどのプレゼントを募って、消防士たちが包装してクリスマスに備えます。
そして、サンタの帽子をかぶった消防士たちが大きな消防車に乗って、子どもたちの家や施設に訪れると、火災や交通事故の怖い思いを忘れたかのように満面の笑顔で彼らを迎えます。子どもたちにとっては大好きな消防士であり、あこがれのヒーローなんですよね。
消防士は、子どもたちへプレゼントを渡すときに必ず、約束を交わします。
それは、火遊びをしないこと、遊ぶときには車に気をつけること、不審者に着いていかないこと、お母さんにやさしくして困らせないことなど、人に思いやりを持って生きるように、さらに、安全に生活するためのモラルを教えます。
そして、病気の子どもたちには、がんばって病気と闘うこと、辛い治療にめげないこと、友達に優しくすることなど勇気を与えます。心の強さを教えることは消防士だからできることなのかも知れません。
プレゼントを受け取った子どもたちは、「I Am A Firefighter」という歌と踊りでお礼を伝えたり、町で見かける消防士たちに思いっきり手を振ったりします。小さいときから消防士の存在を頼もしく感じていて、いつかは消防士のような存在になりたいと夢見る子も多いです 。
2014-I Am A Firefighter (Christmas Little Song)/ NorthBerwickNursery(出典:YouTube)
消防士たちにとって、消防署=家で、仲間=家族。
アメリカのほとんどの消防署では異動もないので、数十年間にわたり家族のように、時には兄弟のように過ごせるのかもしれません。
そしてクリスマスの日。消防士達は家族と離れて働いていて、クリスマスの日に発生するツリー火災や飲み過ぎた人の救急搬送など、忙しい一日を過ごします。
Christmas with Syracuse Firefighters (出典:YouTube)
彼らがなぜ毎日、元気に明るく過ごせるのか?楽しく働けるのか?それは、毎当務、その日が人生の最後の日になる可能性もあるからかもしれません。また、多くの人の最後を見届けてきたから、誰にでも温かく許す気持ちも深く持てるような気がします。
よくアメリカで、消防士はヒーローにたとえられますが、その意味は消防士が自らヒーローと思っているわけではなく、地域住民からヒーローと思われるような日頃の行いや地域住民と心を通わせる奉仕をしているからだと思います。
いかがでしたか?
最近、日本では毎日のように消防士の不祥事が報じられています。
もしかしたら、日本の消防士たちもヒーローとして、もっと地域社会から親しまれるようになったら、自ずと不祥事が減っていく、ひとつのきっかけになるのかもと考えたりしています。
その年のクリスマスやお正月を家族で笑顔で過ごせるように、不祥事を起こす1秒前に気づいて欲しいと思います。その次の1秒をどうするかで、一生が決まってしまうことがあります。
「注意一秒、怪我一生」という標語がありますが、すべてにあてはまるかもしれません。
どうぞ、みなさんがステキなホリデーシーズンを過ごされますように!
一般社団法人 日本防災教育訓練センター
http://irescue.jp
(了)
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