第6回:AIの未来がコワすぎる5つの理由(前編)
負の部分にも注目しないと悲惨な結果も
BCP策定/気候リスク管理アドバイザー、 文筆家
昆 正和
昆 正和
企業のBCP策定/気候リスク対応と対策に関するアドバイス、講演・執筆活動に従事。日本リスクコミュニケーション協会理事。著書に『今のままでは命と会社を守れない! あなたが作る等身大のBCP 』(日刊工業新聞社)、『リーダーのためのレジリエンス11の鉄則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『山のリスクセンスを磨く本 遭難の最大の原因はアナタ自身 (ヤマケイ新書)』(山と渓谷社)など全14冊。趣味は登山と読書。・[筆者のnote] https://note.com/b76rmxiicg/・[連絡先] https://ssl.form-mailer.jp/fms/a74afc5f726983 (フォームメーラー)
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■コインには表と裏がある
AIは私たちの暮らしを豊かにしてくれるであろうことは、誰しもが認めるところではありますが、他方、AIにもそれなりの懸念すべきリスクがあるわけです。しかし世の中の現実を見れば、どちらかと言えばネガティブなAIの話は敬遠されがちで、多くは期待と希望に満ちた目でAIが見られていることを実感せざるを得ません。このオプティミスティックな雰囲気は言うまでもなく、AIがすでにビジネスや投資の対象として深く経済世界に浸透しているからなのでしょう。
もちろん筆者は、投資や金儲けの対象としてAIを見る姿勢が好ましくないと述べているわけではありません。多くの投資を呼び込み、それが結果的にペイしなければ、莫大な予算を必要とするAIの研究開発を推進したり、AIを改良し、より高性能なAIとして発展させる機会にはつながらないからです。
とはいえ、AIがコインの表と裏もしくは諸刃の剣であることに変わりはありません。AIが利便性や生産性を劇的に向上させる反面、人間がAIを自分の思惑通りに利用しようとして突き当たる限界や事故、広く言えば未知のリスクが潜在していることは、これまで繰り返し述べてきた通りです。
以下では、筆者によるチープなAIリスク批判はひとまず置いておき、米国のメディアCNBCがAIの未来について専門家から意見を聞いてまとめた「5つの脅威」について、前編と後編にわたってご紹介したいと思います。
■参考記事(CNBC)
https://www.cnbc.com/2018/08/01/five-of-the-scariest-predictions-for-ai.html
■大量失業の時代
英国・エジンバラ大学の情報学部教授アラン・バンディ氏は、AIによる生産性の向上や新たな雇用の創出が、とくに長期的な視点で見た場合に既存の大量失業者をカバーするだけの力があるかどうか疑問であるとの見方を示しています。AIを支持する人々の言い分としては、テクノロジーが新たな雇用ニーズを生み出し、AIをさらに高性能にするためにすぐれた能力が求められる。AIを開発する側だけでなく、それを利用する側にしてもAIを日々の仕事で使いこなせるような役割やスキルが必要となるのだと言います。
米国の調査会社ガートナーによれば、2020年までにAIが180万人の失業者を出す一方で、230万人の雇用を生み出すとしています。失業した180万人はすべてカバーされるのみならず、さらに50万人がAIのおかげで新たな仕事にありつけるとの見方ですが、果たしてこの楽観的な予測、信頼してよいものでしょうか。
肉体労働を伴う仕事や一般事務職の仕事、あるいは多くのサービス業務をAIロボットやAIシステムで代替させようとすれば、その業務に特化したおびただしい数の専用AIアプリを開発しなければなりません。そしてそのために、多くのAI関連の雇用ニーズが生まれることは間違いないでしょう。けれどもそれによって、AIにとって代わられたすべての雇用をカバーして有り余るなどというのは、合理化(=人減らし)のためにAIを活用しようというビジネス界の思惑と大きく矛盾するのではないでしょうか。
「AIを通じて(労働者の)技能を高めたり新たな仕事を作り出したりすることで労働市場への影響を軽減することは可能かもしれないが、たとえベーシックインカムを広く導入したって失業の問題を一朝一夕には解決できないことは明らかだ」。CNBCの記事はこう結んでいます。
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