澤田氏(左奥)は都の取り組み以外に、救助活動を妨げないなど一斉帰宅を行わない意義も説明した

リスク対策.comは23日、「新・帰宅困難者対策 本当に社員の帰宅を抑制できますか!?」と題した講演会を東京都千代田区の全国町村会館で開催。東京都総務局総合防災部防災管理課統括課長代理である澤田徹氏が「帰宅困難者対策の東京都の取り組み」と題し、新たに始めた「東京都一斉帰宅抑制推進企業認定制度」などについて説明した。

澤田氏は2011年の東日本大震災で、都内において約352万人の帰宅困難者が発生したことを説明。首都直下地震が発生した場合、例えば千代田区丸の内から埼玉県和光市までの21kmは通常なら5時間で歩けるが、発災後はm2あたり6人もいる満員電車のような密集状態を歩かねばならず、15時間はかかると紹介。帰宅は現実的ではないほか、発災後72時間は人命救助最優先で緊急車両が走るために、道路をふさいだりすることのないよう、移動せず職場などにとどまるよう呼びかけた。

そして事業者に対し一斉帰宅の抑制や安否確認手段の周知を責務とした、東京都帰宅困難者対策条例を紹介。「ハンドブックやリーフレットで周知を呼びかけている」としたが、認知度は全体で46.2%、特に20代女性で29.7%、同じく男性で33.3%と若年層で低いほか、中小企業でも知られていない傾向にあると分析した。従業員の帰宅を抑制するための事業者の備蓄は、2017年の東京商工会議所の調査で3日分以上の飲料水を備蓄している事業者は50.1%、同じく食料は46.2%にとどまっている。

澤田氏は事業者に対し、従業員の一斉帰宅の抑制のため、「3日分の備蓄に加え、来社中の顧客や取引先の分も考慮し、10%程度余分に用意してほしい」と説明。さらに「事業者と従業員間のみでなく、従業員が安心して職場で一時滞在できるよう、家族との安否確認手段の周知も行ってほしい」と呼びかけた。

今年度の新規事業であり、31日まで応募企業を募集している「東京都一斉帰宅抑制推進企業認定制度」について、水9Lと食料9食分といった3日分の備蓄、安否確認手段と安全な場所にとどまることの従業員への周知、従業員および施設などの安全確保に加え、さらにひと工夫加えた取り組みを行っている企業を「一斉帰宅抑制推進企業」として認定する旨を澤田氏は説明。「2017年の対策検討会議を経て導入を決めた。中小企業は特に取り組みに後ろ向きになりがち。先進的な事例集作りたい」と述べた。

工夫例としては備蓄スペース不足解消のため、従業員の机の下に備蓄を分散する、近隣の事業者や取引先と備蓄品の融通や従業員受け入れで協力するなどを挙げた。認定されると認定マーク交付や都のホームページに社名や取り組みを紹介する。特に優れた取り組みを行っている企業は、モデル企業として、認定式で認定証を交付し楯も授与する予定。

■制度の詳細はこちら
http://www.bousai.metro.tokyo.jp/bousai/1000019/1005811/1005948.html

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介