東京ビッグサイトで開催された「防災EXPO2018」での様子。ブースに立ち寄った人は、前年の2倍となり、常に満席の状態だった

防災週間の9月3日。この日、トヨクモ株式会社の安否確認サービス2を利用している企業や団体を対象に、全国一斉の防災訓練が行われた。同社の安否確認サービスは、災害時に気象庁の情報と連携して自動一斉送信を行うというもの。

通知方法はメール(最大4アドレス)、専用アプリ、ツイッターの3種類が用意されており、利用ユーザーはログイン情報を入力することなく設問フォームにアクセスして、安否の状況を回答することができる。

写真を拡大 【左】設問フォームに直接アクセスできるURLがメールで届く【右】専用アプリの回答画面

今回の一斉訓練では、900社を超える契約社の中で参加を希望した354社8万3806人を対象に、詳細な送信時間を事前に知らせず、より現実に近い形で訓練を行った。

この一斉訓練では、管理者が通常通り自動集計されたリアルタイムな回答結果が見られるほか、自社の回答時間の中央値や回答率の時間遷移などが確認できる個別レポートが提供され、全体平均と比べたり偏差値が確認できるようになっている。その中で注目すべき数値を下記の表にまとめた。

写真を拡大 最頻値・回答時間の中央値の全社平均表

まず、回答時間の最頻値。送信が行われてから回答までにかかった時間で、最も多かったのは2分となった。同数値は、60%以上の企業で2分以内、75%以上の企業で3分以内となっており、これだけでも安否確認サービスの有用性が伺える。

安否確認サービスを導入していない場合、いくらメールや設問のテンプレート等の事前準備をしておいたとしても、たった2分ではメール送信を行うことすら難しい。安否確認サービスを利用している場合、あらかじめ災害の範囲や規模を設定して、発生した際に送信するユーザーを決めておけば、休日や夜間に災害が起こったとしても、システムが自動的に送信を行い、ユーザーも安否状況を回答できるのだ。

また、トヨクモの安否確認サービスでは、メール本文だけでなく設問も自由にカスタマイズでき、自動送信の設定も数に制限なく作成できることから、従業員の安否確認以外に店舗や施設、サプライヤーの状況を確認する一斉送信も同時に自動送信することが可能で、多くのサプライヤー企業を抱えるTDK株式会社(導入事例)のような製造・販売メーカーでの導入も、広がりを見せている。

次に注目すべきは、回答時間の中央値。つまり、回答率が50%を超えた時間だ。
全社の中央値は約46分だったが、60%以上の企業では30分以内となっている。
これは、安否確認サービスを十分活用できれば、30分以内に半数以上のユーザーの安否状況が集まることを意味している。

迅速な状況把握や対策指示が必要になる災害時において、これは非常に重要になってくるだろう。この対策指示という点において、トヨクモの安否確認サービスでは、メールの一斉送信の他に、掲示板やメッセージといった機能が充実している。

写真を拡大 スマートフォンで撮った写真をつけて、アプリからすぐに書き込める

掲示板機能は、現在リリースされている安否確認サービスの多くで備わっているが、トヨクモの安否確認サービスには「メッセージ」という特徴的な機能が備わっている。これは全ユーザーが閲覧・書き込みできる掲示板と違い、指定したメンバーだけが閲覧・書き込みできる、グループ掲示板のような機能だ。この機能があることにより、掲示板等で対策指示を出す前に、限定的なメンバーのみで対策の方針を議論することができる。

今回の一斉訓練では、安否確認サービスの活用度を再確認してもらう目的とは別に、多数のメール配信やアクセスが集中しても、システムが正常に稼働するかどうかの負荷検証も兼ねていた。

安否確認サービスは非常時にアクセスが集中するシステムの為、東日本大震災時に停止してしまったシステムや、大阪北部地震や北海道胆振東部地震において、正常に動作しなかったシステムが少なからずある。その為、同社もその対策に日々取り組んでいる。

サービス開始当初から、アクセス集中による負荷に応じてサーバーの自動拡張ができる、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のクラウドサーバー上でサービスを構築。今年に入ってからはメール配信システムも見直され、月間300億通以上配信しているセンドグリッドというシステムに置き換わった。センドグリッドは大量のメールを高速配信できるだけでなく、無効なメールアドレスには送信しないなどの処理を取り入れることができ、安否確認メールが迷惑メールと判定されるリスクが低減されている。

今回の一斉訓練で、メールの配信が正常に完了し、サーバーも余裕をもって稼働していたことから、日々の取り組みに効果があることが実証された形となった。いざという時に必要なサービスだからこそ、導入する際はこういった検証を重ねて、より堅牢なシステムに進化していくサービスを選定したいものだ。

【一斉訓練レポート】本記事で紹介した数値以外の結果も閲覧できます。


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(了)