円相場が約3カ月ぶりの安値となる1ドル=150円台後半に下落した。市場では円安の背景として(1)日銀の緩和環境の継続観測(2)米早期利下げ観測の後退(3)新しい少額投資非課税制度(NISA)の開始―が指摘されている。日米金利差の縮小は市場の想定ほど進まず、後ずれしそうな状況だ。
 円相場は13日の海外市場で一時150円80銭台に急落し、14日の東京市場でも150円台後半を中心に推移した。きっかけは、米労働省が13日発表した1月の消費者物価指数の伸びが市場予想を上回ったことだ。インフレ圧力は根強いとの見方から米金利先物市場が織り込む利下げ開始時期は3月との予想が1割に落ち込み、1カ月前の8割から一段と低下した。利下げは5月との予想も4割にとどまり、6月以降との見方が広がっている。
 米利下げ観測の後退が円売り・ドル買いを誘った背景には、日銀の緩和長期化観測が強まっていたことがある。日銀の内田真一副総裁は今月8日の講演で「マイナス金利を解除しても、その後にどんどん利上げしていくような経路は考えにくい」と述べ、解除に踏み切る場合でも緩和的な金融環境が継続することを強調した。
 市場関係者の多くは2024年の円相場について、米国の利下げ局面への転換と日銀のマイナス金利解除を前提に「緩やかな円高・ドル安」を予想していたが、あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジストは「米国の景気が強く、短期的には円安基調が続きそうだ」と指摘する。
 1月に始まった新NISAも円売り圧力として意識されている。日本総合研究所の立石宗一郎研究員は、新NISAで海外投資が年間0.7兆~3.9兆円増え、27年までの4年間で1~6円程度の円安・ドル高要因になると試算している。 

(ニュース提供元:時事通信社)