【カイロ時事】トルコ南部で昨年2月6日に発生した大地震から1年となるのを前に、国連児童基金(ユニセフ)の根本巳欧シリア事務所副代表が記者会見を開き、甚大な被害が出たシリア被災地での活動について報告した。学校再開など進展があった一方、新たな課題も生まれ「支援ニーズはまだまだある」と強調。援助には約600億円の資金が必要だが、約8割が不足しているとして、支援継続を呼び掛けた。
 会見は2日、オンラインで行われた。根本氏は、内戦状態のシリアではアサド政権側と北西部の反体制派支配地域などで分断され、支援が難しい状況が続いていると説明。内戦や地震で社会基盤が崩れた上に経済危機も重なり、人口の9割が貧困ライン以下の生活を強いられ、250万人以上の子供が学校に通えていないと語った。
 根本氏によれば、1000カ所以上の学校が避難所としての役割を終えた。被災者は避難所生活を脱したが、支援を必要とする人が地域に点在するようになった結果、サービス提供が困難になるという問題が浮上。さらに、被害を受けた2000校以上の修復が課題として残るほか、内戦と地震を経験した子供や家族の心のケアなど中長期的な取り組みも必要だ。
 中東地域を巡っては、パレスチナ自治区ガザで続くイスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘に世界の注目が集まっている。一方、シリアでは同国への関心低下に懸念も出ているといい、根本氏は「シリアの子供たちを忘れないで」と訴えた。 
〔写真説明〕2日、オンラインで記者会見する国連児童基金(ユニセフ)の根本巳欧シリア事務所副代表

(ニュース提供元:時事通信社)