宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)の劇団員が急死した問題は、華やかな世界の裏に隠れた負の側面を浮き彫りにした。取材に応じた元タカラジェンヌで公認心理師の東小雪さん(38)は、自身の経験を踏まえ、「これは人権侵害。ファンやスポンサー、日本社会がどう向き合うかが問われている」と投げ掛ける。
 東さんは2005年に入団。直前の2年間通った宝塚音楽学校では1年生の時、夜中まで上級生から叱責され、睡眠や食事も満足に取れなかったという。親などに相談する「外部漏らし」も禁じられ、精神的に追い込まれた。「『厳しい指導』でなくパワハラであり暴力だった」と振り返る。
 しかし、「ひとたび学年が上がると自分も加害者に。人間は環境が整えば簡単に(言葉などの)暴力を振るってしまう」。だからこそ、個別事案ではなく、構造自体の改革の必要性を感じている。
 「遺族が公表した訴えに、亡くなった女性の『どんなつらいことがあっても舞台に立っている時は忘れられる』との言葉がある。私も同じ気持ちだった」と共感。しかし、「だからと言ってその裏にある暴力は看過できない」と語気を強める。
 劇団の村上浩爾専務理事が今後について語った「伝統と時代の変化をミックスしていく」との言葉にも、「暴力と交わるものはない」と反論する。一方で、宝塚らしさを象徴する大人数のラインダンスを例に挙げ、「厳しさをなくした後に、今と同じように、あれだけ統制が取れたパフォーマンスができるか分からない」と率直に述べた。
 東さんは06年に宝塚を退団し、LGBTなど性的少数者の支援活動に取り組む。劇団のパワハラについても約10年前に著書の中で告発し、発信を続けてきた。「悲劇を繰り返さないよう今こそ変えなければならない」と訴える。 
〔写真説明〕元タカラジェンヌの東小雪さん

(ニュース提供元:時事通信社)