2023/11/25
防災・危機管理ニュース
宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)の劇団員が急死した問題は、華やかな世界の裏に隠れた負の側面を浮き彫りにした。取材に応じた元タカラジェンヌで公認心理師の東小雪さん(38)は、自身の経験を踏まえ、「これは人権侵害。ファンやスポンサー、日本社会がどう向き合うかが問われている」と投げ掛ける。
東さんは2005年に入団。直前の2年間通った宝塚音楽学校では1年生の時、夜中まで上級生から叱責され、睡眠や食事も満足に取れなかったという。親などに相談する「外部漏らし」も禁じられ、精神的に追い込まれた。「『厳しい指導』でなくパワハラであり暴力だった」と振り返る。
しかし、「ひとたび学年が上がると自分も加害者に。人間は環境が整えば簡単に(言葉などの)暴力を振るってしまう」。だからこそ、個別事案ではなく、構造自体の改革の必要性を感じている。
「遺族が公表した訴えに、亡くなった女性の『どんなつらいことがあっても舞台に立っている時は忘れられる』との言葉がある。私も同じ気持ちだった」と共感。しかし、「だからと言ってその裏にある暴力は看過できない」と語気を強める。
劇団の村上浩爾専務理事が今後について語った「伝統と時代の変化をミックスしていく」との言葉にも、「暴力と交わるものはない」と反論する。一方で、宝塚らしさを象徴する大人数のラインダンスを例に挙げ、「厳しさをなくした後に、今と同じように、あれだけ統制が取れたパフォーマンスができるか分からない」と率直に述べた。
東さんは06年に宝塚を退団し、LGBTなど性的少数者の支援活動に取り組む。劇団のパワハラについても約10年前に著書の中で告発し、発信を続けてきた。「悲劇を繰り返さないよう今こそ変えなければならない」と訴える。
〔写真説明〕元タカラジェンヌの東小雪さん
(ニュース提供元:時事通信社)
- keyword
- 人権
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方